アフリカの発展について話しあう国際会議「第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)」を2016年8月に控え、アフリカのNGO「アフリカ市民協議会」(CCfA)と日本のNGO「市民ネットワーク for TICAD」が、“市民社会がTICAD VIに求めること”と題した提言を都内で発表した。このなかで、アフリカの自助的な発展に寄与するためにNGOが提言したのは下の3点。
1)一次産品への依存から脱却を
一次産品への過度な依存は、アフリカ経済にとって大きなマイナスとなっている。国際通貨基金(IMF)によると、原油や天然ガスが輸出総額の9割、国家歳入の6割を占めるナイジェリアは2014年、約6.3%の国内総生産(GDP)成長率を記録したが、2015年は約4.0%に減速する見通しだ。
世界銀行が2015年に出した報告書「アフリカの鼓動」もまた、「原油をはじめとする一次産品の価格急落を受け、サブサハラ(サハラ砂漠以南の)アフリカ諸国の成長率が2014年の4.6%から2015年は3.7%に減速する」と指摘する。
こうした現状を懸念するNGOは「アフリカ諸国の政府は一次産品への依存を脱却し、自国経済の多角化に力を注ぐべき。自国の自然を積極的に活用できる観光や農業を推進したらどうか」と主張している。
一次産品の価格は、国際市場の需要と供給によって決まる。アフリカは、石油輸出国機構(OPEC)のような、一次産品の価格をコントロールできる枠組みをもっていない。このためアフリカ自身が一次産品の国際価格を決定する枠組みをアフリカ連合(AU)は作るべきだ、とNGOは提案する。
一次産品を原料としてそのまま輸出することも問題だ。アフリカ各国の政府は一次産品に付加価値をつけ、市場の流通させるべき、とNGOは声を大にする。
2)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現を
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とは「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」ことを指す。
UHCの実現は、アフリカの持続可能な発展に不可欠だ。国連加盟国が2015年9月に採択した「持続可能な開発目標」(SDGs)は、UHCの達成を目標のひとつに定める。UHCを実現させるため、アフリカ各国の政府は国家予算の15%を保健に費やすことを定めた「アブジャ宣言」を達成すべきだ、とNGOは指摘する。
ギニア、リベリア、シエラレオネの西アフリカ3カ国で2014年、エボラ・ウイルス病が蔓延した。これはアフリカの保健システムが弱いから、深刻化した。エボラのような地球規模の「保健危機」を防ぐには、保健危機に対するガバナンスの強化と質の高い公衆保健システムが不可欠だ。
国際協力NGOのネットワーク団体「動く→動かす」の稲場雅紀事務局長は「日本政府はすでに『国際保健外交戦略』(2013)で、UHCの促進を戦略化している。ただ国際協力機構(JICA)はUHCを実施する能力が足りない。実施の面では課題が残る」と述べる。
3)雇用創出で若者の「過激化」を防ぐべき
アフリカでは近年、ボコ・ハラム(ナイジェリアなど)やアルシャバブ(ソマリア、ケニア)など過激派集団が勃興している。ボコ・ハラムは2014年、ナイジェリア北部のボルノ州で276人の女子生徒を誘拐し、国際的非難を浴びた。
この問題の背後にあるのは、若者の失業、雇用不安、将来に希望がもてない社会だ。平和・紛争学を専門とするカメルーン人のウィリブロード・ゼ・ングワ博士は「職のない若者が暴力の実行部隊として利用されている。雇用を創出すれば暴力を予防できる」と語る。
NGOは、テロリズムが台頭する地域では「宗教的・倫理的教育のための国家委員会」といった機関を設置し、宗教過激主義の動向を把握し、対処すべきだ、と提言する。
TICADは1993年、東京で初めて開催された。TICAD VIは8月27、28日の2日間、ケニアの首都ナイロビで開催される予定。稲場氏は「日本ではTICAD VIが開催されることへの認知が低い。今年は初めてアフリカで開催される。日本とアフリカが連携を深めていくことを、広く市民に伝える必要がある」と訴えた。