「森は地球のエアコン。だから守る」、ダイキンがリベリアでSDGs活動

リベリアの東ニンバ自然保護区(© Conservation International/photo by Bailey Evans)

「森は地球のエアコンだから」。世界最大手の空調機メーカー、ダイキン工業が5億円を投じ、アフリカや東南アジアなど7カ所で森林保全活動に力を入れている。同社CSR・地球環境センターの洲上奈央子さんは5月9日、都内で開かれたTICAD(アフリカ開発会議)セミナー(主催:世界銀行)で講演し、「新興国ではエアコン需要が急速に拡大している。温室効果ガスの排出量が増えてしまうので、二酸化炭素(CO2)を吸収し、地球の温度を調整してくれる森を、ダイキンは森に住む人々とともに守りたい」と語った。

森林保全活動の名称は「空気をはぐくむ森プロジェクト」。期間は、2014年から、創業100周年を迎える2024年までの10年間。ブラジル、中国、リベリアなど世界7カ所の合計約1100万ヘクタールの森で、10年でCO2 排出量を700万トン以上削減するとの目標を掲げる。

1100万ヘクタールとは韓国の国土より一回り大きい面積だ。また、全国地球温暖化防止活動推進センターによると、日本の1人当たりCO2排出量は年間2.2トンだから、700万トンは、日本人320万人分の1年分に相当する。

リベリアでダイキンが支援するのは、首都モンロビアから北東に約300キロメートルのところにある東ニンバ自然保護区。協働パートナーの国際NGOコンサベーション・インターナショナル(CI)が中心となって、森林を守りながら地元民が農業や職業に対する支援を受けられる仕組みを作っているところだ。

支援策は、農地を狭めても、食料を安定的に確保できるよう、効率的な稲作や野菜の育て方を教えたり、また狩猟をしないよう、違法伐採者や密猟者から守る「最前線の保護活動家」として地元民を訓練し、雇用するというのが内容だ。洲上さんは「ただ木を植えるのではなく、地元の人たちが森の大切さを理解し、主体的に守っていけるように支援したい」と話す。

ダイキンが東ニンバ自然保護区への支援を決めたのは、絶滅危惧種のウェスタン・チンパンジーをはじめとする多数の固有種が生息し、アフリカで最も生物多様性に富む重要な地域だからだ。「ダイキンにとってリベリアは正直、営業面でのかかわりは薄い。でも、空気を扱うグローバル企業としての使命がある」と洲上さんは説明する。

ダイキンは世界145カ国で空調機を販売している。2兆円の売り上げに対して海外事業が占める割合は、10年前の50%から2014年は74%まで伸びた。海外事業が拡大するなか、「空気をはぐくむ森プロジェクト」を始めるきっかけとなったのが、2008年にスタートしたインドネシア・西ジャワ州のグヌングデ・パングランゴ国立公園での植林活動だったという。

絶滅の危機に瀕している種を守る活動をする組織「絶滅ゼロ同盟(AZE)」は現在、世界で920種の動植物、587地域を保全すべき対象に指定している。2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」は、17の目標のうち、15番目に「持続可能な森林の経営、生物多様性の損失の阻止」を、2番目に「持続可能な農業の推進」を、8番目に「雇用の促進」を目標に掲げる。「空気をはぐくむ森プロジェクト」をダイキンはSDGsに貢献する取り組みとして位置付けている。

リベリアにある東ニンバ自然保護区の住民(© Conservation International/photo by Heidi Ruffler)

リベリアにある東ニンバ自然保護区の住民(© Conservation International/photo by Heidi Ruffler)