「ぼくはマヤカの会員なんだ‥‥」。ミャンマー人男性がこう話すときは、奥さんに怒られたとき、奥さんとケンカしたときだ。マヤカとは「ミャンマー全恐妻家連盟」の略。といっても、こんな連盟が実在するわけではなく、ミャンマー流のジョークだ。若い男性がよく使うという。
ミャンマー最大の都市ヤンゴンで40~60代の男性20人に、「あなたはマヤカのメンバーですか?」と聞いてみた。すると「はい」と答えた男性が2人いた。
そのうちのひとり58歳の男性は「飲酒について夫婦で交わしたルールを破ってしまった。妻にこっぴどく怒られた。飲みすぎてしまったから」とマヤカに“加入”した理由を説明する。「でも、うちの妻は普段は優しいよ。でも怒ると恐い。彼女は正しい理由で怒っているから、ぼくは反論できないんだ」と苦笑いする。もうひとりのマヤカのメンバーは「お金のことでこないだ、妻に怒られたよ」と言う。
「マヤカのメンバーではない」と答えたのは18人。ユニークだったのは、全員が「妻とは対等だ。(妻よりも)自分が決定権をもっているわけではない。妻はやさしい」と力説したことだ。
ヤンゴン市内のホテルで働くマウさんいわく、「ミャンマー人の奥さんはやさしい人が多い。ただ夫婦間のルールを夫が破ったとき、妻はしっかり注意する。ビールを飲みすぎたとき、帰りが遅くなったときなど。そんなとき、ミャンマーの男性は『自分はマヤカのメンバーなんだ』と愚痴をこぼす」。
日本では3組に1組が離婚する。ミャンマーの離婚率は一説によると10%ほど。結婚30年を迎えるというヤンゴン市内の男性(62)は、夫婦円満の秘訣について「お互いに尊敬しあうこと、対等な立場で話し合うことを大事にしているよ」と語る。
ミャンマーの低い離婚率を支えているのは、「家庭での対等さにある」と単純に言い切ってしまっていいかどうかはわからない。ただ「ぼくはマヤカのメンバーだよ」というミャンマー流ジョークは、夫婦の約束を破って妻からこっぴどく叱られた男性にとって、不平不満を笑い飛ばせる一種のガス抜きになっている。これによって夫婦喧嘩が減るとすれば、マヤカのメンバーでいるうちは夫婦円満が続くといえそうだ。