多国籍企業の「合法的脱税」を徹底公開すべき、G7伊勢志摩サミット前にオックスファムが要請
12日、ロンドンで開催された腐敗防止サミット。ここで柴山昌彦首相補佐官は、G7伊勢志摩サミットにてタックスヘイブンを利用した租税回避対策を含む腐敗対策方針をサミット後の首脳宣言に盛り込み、付属文書として行動計画をまとめる意向を示しました。
こうした動きを受け、オックスファム・ジャパンは、日本政府に対し、以下を要請します。
多国籍企業等の情報公開を徹底し、国際協調による公正な国際課税制度の実現を
本年4月上旬、ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)はいわゆる「パナマ文書」を公表し、さらに5月10日には世界のタックスヘイブンに設立された21万社にも上る情報を公開しました。そこには、世界の富豪、大企業がタックスヘイブンを利用して「合法的脱税」を行っている実態が明らかにされ、世界に衝撃を与えました。
世界の最も裕福な62人が世界の下位半分の36億人に匹敵する資産を保有しているといわれるように、世界的な冨の偏在は著しくなってきており、タックスヘイブンはこうした格差を広げる一因となっています。タックスヘイブン・システムのもとで、世界全体で年間法人税収の逸失は1000億~2400億ドル(11兆円~26.4兆円)、すなわち世界の法人税収の4~10%にも上り、また個人資産への税収の逸失は1900億ドル(21兆円)にも上っています。
また、貧しい途上国では毎年1700億ドル(19兆円)もの税収の逸失を余儀なくされています。これだけの財源があれば、今G7サミットでも重要議題となる保健サービスの拡充を通し、1.5億人の子どもたちの命を救うことができます。
このような不公正な税のあり方を是正するために国際社会は一致して取り組むべきです。「パナマ文書」は、英国、ロシア、中国などの最高権力者・関係者が不正な蓄財、租税回避に関与した事実を暴露し、人々の強い怒りを呼んでいます。今こそ格差是正、税の公平性の実現、財政健全化のために、国際課税制度の抜本的な改革を進めるときです。
すでに4年前にOECD租税委員会は、グローバル企業の目に余る租税回避行動に対処するために、BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトを発足させ、2015年10月に「最終報告書」を公表しました。そこには、多国籍企業の世界的な活動の報告義務、租税回避の防止策など、多くの評価すべき勧告が盛り込まれています。
また、今G7伊勢・志摩サミットでも租税回避問題が重要議題となり、首脳宣言に盛り込まれると同時に行動計画が策定される予定です。
私たちは、G7伊勢・志摩サミットにおいて議長国の日本政府が積極的にイニシアティブをとり、BEPS最終報告書の積極的内容を活かした公正な国際課税制度の実現に向け、以下の3項目を首脳宣言と行動計画に盛り込むことを要請します。
提言
1.多国籍企業情報の公開
今後整備される金融機関口座情報の自動交換制度や多国籍企業の国別報告制度を通じて収集した情報を一般公開すること。これらの制度にはタックスヘイブンを含むあらゆる国・地域を例外なく参加させること。とくに後者にあっては、4月12日提案された欧州委員会の「大企業の税逃れを防ぐ新制度」を参考に徹底した情報公開と透明性を図ること。
2.内部告発に依拠しない実質的所有者の透明性の確保
これまで秘密の壁に阻まれてきたタックスヘイブンにおける実質的所有者の一部が「パナマ文書」で明らかとなりました。これらを利用しつつ、「権限ある当局間の国際的な実質的所有者情報の交換」(4月G20財務相・中央銀行総裁会合)を早急に強化し、内部告発に依拠しない実質所有者の透明性を確保すること。これは「腐敗、租税回避、テロ資金供与、マネーロンダリングの目的で悪用されることを防止するため」(同会合)にも不可欠です。
3.開発途上国を含む広範な国々が参加できる国際的枠組みの構築
現在この問題についてはOECD(経済開発協力機構)並びにG20が中心となって取り組まれており、G20は非G20諸国に対して「開発途上国を含む全ての国・地域に対して参加を奨励する」(G20アンタルヤ・サミット)と呼びかけています。タックスヘイブンが上記の目的に悪用されていることに鑑み、これを防止するために、途上国を含む広範な国々が実質的に参加できる国際的な枠組みを構築すること。