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日本の開発分野のキーパーソンが審査員となって、起業を目指すパレスチナの若者を応援するビジネスコンテストが8月、パレスチナ自治区ガザ地区で開かれる。コンテストの名前は「ジャパン ガザ イノベーション チャレンジ」(主催は同名の任意団体)。
■優勝賞金は110万円!
このコンテストの意義について、主催団体の上川路文哉代表は「ポイントは開発援助でないこと。コンテストで支援するパレスチナの若者が、自分のビジネスを立ち上げ、尊厳をもって経済的に自立できるようになる仕組みを作りたい」と語る。国連や国際NGOによる“支援漬け”のパレスチナ人たちに「自立して生きるハングリー精神」を付けてもらいたいとの狙いもある。
優勝賞金は、最大2チームに合計1万ドル(約110万円)。ユニークなのは、賞金を一括で渡すのではなく、優勝チームが作ったキャッシュフロー計画に沿って払うことだ。賞金は、クラウドファウンディング「READYFOR」で集める。
優勝チームはまた、日本行きのチケットも手にできる。経営者育成セミナーや、日本企業の担当者や投資家との交流会に参加したり、優勝チームが希望する工場を視察できる。
コンテストの参加者は6月下旬から1カ月間、ガザで公募する。エントリーできるのは、「生活の向上」(一橋大学の米倉誠一郎教授が発案)につながるビジネスアイデアをもち、失業率が高い10~30代の男女。1チーム4~5人で構成する。メンバーの過半数が女性であることが条件だ。
「ガザでは、モノや人の移動が制限されている。このため、インターネットを通じて世界を相手に仕事ができる情報通信技術(ICT)産業に焦点が当たりがち。だが、なるべく多くの人に利益を還元できるビジネスを選びたいので、ICT以外の領域からも幅広くアイデアを募りたい」(上川路代表)
審査では、ビジネスモデルだけでなく、実現可能性や社会へのインパクトも重視する。書類審査で10チームに絞りこんだうえで、8月のイベントに参加してもらう。これが最終選考だ。
審査員に名を連ねるのは、上川路代表や米倉教授をはじめ、国連パレスチナ救済事業機関(UNRWA)の清田明宏・保健局長、ARUN合同会社 の功能聡子ら、大学、国連、民間企業、政府系機関、NGO などから20人。いずれも日本の開発分野を代表する人たちだ。
■2017年以降も続けたい
最終審査の舞台となるのは、ガザ南部のハーンユーニスにあるUNRWA職業訓練校。このコンテストでは、優勝チームを選ぶだけでなく、書類選考で絞った10チームへのフォローも怠らない。米倉教授がかかわったソマリランドでのスタートアップ企業に対して成功した支援事例を紹介するなど、参加者の起業に対するモチベーションを引き上げることも狙う。
また、キャッシュフロー予測や事業計画などは不十分だが、アイデアそのものは良いと判断したチームには、審査員らが、ビジネスモデルのブラッシュアップに協力する。パレスチナの若者にとっては、弱点を指摘・補強してもらうメリットは小さくない。
上川路代表は「このコンテストは(今回成功させ)2017年以降も続けたい」と意欲を燃やす。そこでネックとなるのが、継続的な資金調達だ。「賞金をクラウドファンディングなどの寄付で賄い続けるのは難しい」と悩みを打ち明ける。社会投資家の注目をガザに集めることが次の目標だ。
上川路代表とガザの関係が始まったのは学生時代。日本・イスラエル・パレスチナ学生会議を2003年に設立。イスラエル人とパレスチナ人の学生を日本に招き、対話の機会を作った。ところが2006年に、イスラム原理主義組織「ハマス」がパレスチナ評議会選挙で過半数の議席を獲得してから、両者の関係はさらに悪化。14年にはイスラエル軍が地上部隊をガザに侵攻させ、多くのパレスチナ人の犠牲者を出している。