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フィリピンの庶民の食材である「モリンガ」(現地名はマルンガイ)が健康食品として人気だ。モリンガのお茶、パスタ、クッキーなどの商品も登場。フィリピンに30年以上住む日本人は「モリンガを摂取してがんが治った人もいると聞く」と話す。モリンガとはワサビノキ科の植物で、干ばつに強く、成長も早い“奇跡の木”。東南アジアではフェンスとしても使われる。
■庶民の味から「健康食品」へ
フィリピン第2の都市セブでチェーン展開する、ヘルシーさを前面に押し出したカフェ「mooshi(ムーシ)」。この店は、モリンガを使ったパスタやドリンクを売っている。モリンガを練り込んだフェットチーネ(平たいパスタ)は一皿245ペソ(約550円)、モリンガを沈めたデトックスウォーターは1杯75ペソ(約170円)、パイナップルとモリンガのミックススムージーは小さいサイズで125ペソ(約280円)、大きいものは195ペソ(約440円)といった具合だ。
mooshiが提供するモリンガ料理・飲み物の値段は、セブの物価と比べるとかなり高い。フィリピンで断トツの人気を誇るファーストフード店「ジョリビー」でさえ、100ペソ(約220円)ちょっとでチキンのセットが食べられる。値段はmooshiの3~4分の1だ。にもかかわらず、mooshiの店内は昼時になると、健康・美容意識の高い女子大生やOLで込み合う。フィリピン大学(UP)セブ校に通う女子大生は「私は糖尿病なの。だから、高いけれどこの店によく来るの」と言う。
アヤラ・モール・セブにあるスーパーマーケット「メトロ」に行けば、ティーバッグのセットになったモリンガのお茶が店頭に並ぶ。味は甘い草といったところ。パッケージには「くつろぎを与えます」と英語で書いてある。
マクタン・セブ国際空港の売店では、モリンガのクッキーもある。値段は12個入りで225ペソ(約500円)。フィリピンでは1ペソ(約2.2円)で買えるお菓子もあることを考えると、驚くほど高価だ。ただ味は、牛乳、砂糖、バターで整えているためまろやか。ヘルシーなデザートにぴったりだ。
モリンガ100%のパウダーもある。青汁のように苦い。そのまま口に入れると、粉っぽくて急き込んでしまう。マニラ在住日本人の中には毎朝、健康増進のため、モリンガをヨーグルトに混ぜて食べる人もいるという。
モリンガは昔から、フィリピンの庶民の間ではスープの具として日常的に食べられてきた。モリンガの葉っぱを摘んで、水と一緒に鍋に入れ、塩を足して火にかけるだけ。薄い素朴な味で、ご飯によく合う。
■WFPはルワンダで栽培
さまざまな製品が出ているモリンガだが、実は国連も効能を認めている。食糧農業機関(FAO)によると、モリンガは、たんぱく質やビタミンA・B・C、ミネラルが豊富。妊婦や授乳期間の母親、幼い子どもに摂取を強く推奨している。モリンガは実際、抗生物質をはじめ、抗トリパノソーマ薬(アフリカの「眠り病」などに効く)、血圧降下剤、けいれん緩和剤、潰よう治療剤、抗炎症薬、コレステロール低下剤、血糖降下剤などに使われる。
世界食糧機関(WFP)は、貧困層の栄養を改善する切り札のひとつとしてモリンガに注目。ルワンダやハイチなどで栽培を支援した実績をもつ。持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる2番目の目標「飢餓を終わらせ、食糧安全保障および栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する」を達成するためにも、モリンガの栽培は今後、世界中に広がっていきそうだ。
国際協力機構(JICA)も先ごろ、中小企業の途上国進出を後押しする「中小企業海外展開支援事業」の助成先のひとつとして、化粧品・医薬部外品の安全性・有効性などを評価する会社DRC(大阪・北)が提案した「ネパールでのモリンガの栽培と商品化の事業調査」を採択した。
DRCは、1人当たりの国内総生産(GDP)が693ドル(約7万3000円、2013年)とアジア最貧国のひとつであるネパールで、現地の農民の協力を得てモリンガを栽培・加工したい考えだ。人口の6割を占める農民の収入向上を目指す。
モリンガは、東南アジアからアフリカまで広く分布する。食用としてだけでなく、インドでは、伝統療法のアーユルベーダで利用されてきた。また、タイ・バンコクの高級ショッピングセンター「ターミナル21」では、モリンガのせっけん(製造元:Wanthai S.T. Products)が1個113バーツ(約340円)で売られている。「肌を光らせる」とうたっているだけあって、洗顔すると「肌が引き締まる感覚がある」と評判だ。