夜明け前からスーパーに並んでも食料は手に入らない!? 悪化の一途をたどるベネズエラ危機

100ボリーバルの札束。10年前は、この金額で(デノミネーションする前なので厳密には10万ボリーバル)プリンターが買えた。ところがいまや、パンも買えないほど、すさまじいインフレが続く。キリスト教系NGO「フェ・イ・アレグリア」で働くベネズエラ人によれば、1日3食とれるベネズエラ人は全体の17%しかいないという

南米のベネズエラではいま、食料と日用品の不足が深刻だ。コロンビアのニュースサイト「エル・ティエンポ」はこのほど、ベネズエラ国内では砂糖やトイレットペーパーなどの日常品の8割以上が不足していると報じた。最低限の生活用品を手に入れるため早朝からスーパーマーケットで列に並ぶのはもはや日常の風景と化している。

ベネズエラは、サウジアラビアを上回る石油確認埋蔵量を誇る国だ。石油は輸出収入の95%を占める。ここ数年の石油価格の下落からベネズエラ経済は窮地に立たされている。ベネズエラは長年、オイルマネーを元手に、日用品を海外からの輸入に頼ってきたため、石油収入が減ったいま、国民を十分に食べさせることができなくなった。

スーパーマーケットには食料や日用品がトラックに積まれてやってくる。だがその日に何が到着するかはわからない。数時間を費やして列に並んでも、何が手に入るかわからないのだ。首都カラカスの周辺でも、たった2袋のトウモロコシ粉(ベネズエラの主食)を買うために太陽が昇る前から道に出て列に並ぶケースもあるという。

こうした危機に直面しているため、1人当たり購入できる量は厳しく制限されている。政府の公正価格監督官は、肉屋の前で「牛肉は1人1キログラムまで」と声を張って指示する。他の商品にも購入制限をかけていく。監督官はまた、列に並ぶ人たちの腕にインクで数字を書いて歩く。一度並んだことを目に見える記録で付けるためだ。

日常生活もままならない状況へのいら立ちは、デモや略奪へと発展する。ベネズエラ社会不安観測研究所によると、2016年の上半期だけで、食料不足に抗議するデモは950回、食料・日用品の略奪も254件に上った。負傷者や死者も出ているという。

ベネズエラは、反米を抱える社会主義国家。ウゴ・チャベス大統領(当時)が2013年に死去してから、元バスの運転手で、故チャベス大統領の側近だったニコラス・マドゥロ大統領が政権を握る。しかし高まる国民の不満から、その立場は危機に陥っている。