中国のインフラ整備が近年、アフリカ大陸全体で影響力を強めている。第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)の開催国ケニアも例外ではない。「日本のインフラ整備は完成まで時間がかかる」といわれる中、国際協力機構(JICA)ケニア事務所の野田光地次長は「日本は『質の高いインフラ』整備で勝負すべきだ」と強調する。
――JICAはケニアでどんなインフラを整備しているのか。
「貿易の促進を目的に、ケニアの港湾都市モンバサの港湾整備や、首都ナイロビの交通渋滞を解消するために道路を拡張する工事などを手がけている。8月25日にはナイロビ高地のンゴング道路の拡張工事に着工した。ナイロビでは片道一車線の道路が多いが、2017年7月末までに片道2車線、計4車線の道路を作る予定だ。道路の両脇に歩行者と自転車専用通路も設ける。渋滞の緩和につながると期待している」
――交通渋滞の原因は何か。
「ナイロビの人口は約300万人。人口密度は高いが、交通渋滞の原因はそれだけではない。ナイロビには中国の支援で信号機が複数設置されている。しかし信号を守る人はほとんどいない。
またケニアでも車を運転するには免許証は必要だ。ところが免許制度はいい加減。賄賂を渡せば免許は取れる。ドライバーの運転技術の低さも渋滞の一因だ」
――交通渋滞でどんな悪影響が出ているのか。
「慢性的な交通渋滞で、交通事故が多発している。乗り合いバス『マタツ』は歩道を走る始末。乱暴な運転で死者が出ることもある。
経済への影響も無視できないレベルだ。世界銀行が2016年2月に発表した統計によると、ナイロビは交通渋滞で毎年1兆4767億シリング(約1兆5000億円)の損失を被っている。交通渋滞の解消は待ったなしの状況だ」
――日中のインフラ整備の違いは何か。
「ケニアが1963年に独立して以来、JICAは継続して支援してきた。インフラに限らず、教育、保健、環境などの分野で存在感を示してきた。
一般論として中国のインフラ整備はスピーディー。だが質には改善の余地がある。対照的に、日本のインフラ整備は、工期は長いが、質は高いとの評価を受けている。長期的に見れば日本のインフラ整備の方がアフリカに利益をもたらすと信じている」
――目覚ましい経済発展を遂げるアフリカは質よりもスピードを重視しているのでは。
「非常に難しい問題だ。任期中に成果を出し、支持を集めたいと思うアフリカの大統領は、短期間で完成する中国のインフラ整備を好むだろう。だが、日本のインフラ整備は技術移転や環境への配慮など、中国のインフラ整備にはない価値も提供している。多様なアクター(関係者)を巻き込む『インクルーシブ(包摂的)な開発』は、日本の支援の軸でもある。JICAはアフリカの大統領に対し、日本のインフラ整備の利点を説明し続けていきたい」
――TICAD VIに何を期待するか。
「質の高いインフラ整備はTICAD VIの重要なテーマの一つで、またアフリカで日本の貢献が期待されている分野だ。TICAD VIでは質の高いインフラ支援の利点を強調し、日本の存在感を示してほしい」