井戸水を手でくむ時代はもう古いかもしれない。創業98年のポンプメーカー、おかもとパイプ(東京・荒川)はこのほど、太陽光を利用して水をくめる「タンデム式ソーラー手押しポンプ」を開発した。岡本直司社長は「これでアフリカの井戸問題を解決できるのでは」と期待を込める。
岡本社長によると、タンデム式ソーラー手押しポンプの導入を予定しているエチオピアでは、井戸の3割が壊れていて使えないという。「壊れた井戸は修理されず、使えないまま放置されている。そのため毎日歩いて2時間かけて川まで水をくみに行き、学校に通えない子どももいる」と指摘する。
手押しで水をくむのは力が必要。小さな子どもにとっては重労働だ。タンデム式ソーラー手押しポンプは太陽光で発電し、その電力で水をくむため、力は不要。「力を使わないため、壊れにくい」(岡本社長)との利点もある。雨が降ったり、また夜など、太陽光が使えないときのために手押しポンプも付いている。
タンデム式ソーラー手押しポンプのもうひとつの利点は取り付けが簡単なことだ。アフリカの井戸は通常、水をくみあげる「くみ上げパイプ」と水を圧送する「水中ポンプ」が並列して設置されている。だがアフリカには穴の幅が10センチメートルしかない井戸もあるため、従来のポンプでは対応できない。タンデム式ソーラー手押しポンプはパイプとポンプを一体化させ、あらゆる井戸に対応できる。
おかもとパイプがエチオピアで商機を得たきっかけは、駐エチオピア日本大使との会話だった。タンデム式ソーラー手押しポンプを大使に紹介したところ、「とても素晴らしい」と高い評価を受けたという。同社はこの9月に、エチオピアの首都アジスアベバの郊外に国際協力機構(JICA)の草の根技術協力事業としてこのポンプを2台設置する。「アフリカにある井戸をより良いものにしていきたい」と岡本社長は意気込みを語る。
タンデム式ソーラー手押しポンプは、日本の経済産業省が2015年度に実施した補助事業「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」に採択され、開発された。ポンプの価格は約200万円。今後はポンプの強みをJICAにアピールし、無償資金協力事業としてアフリカでポンプを普及させていく予定だ。