- 2012-11-08
- 紛争
進化するPKO、ラドスーPKO局長は「日本にはより多くの女性要員を派遣してほしい」
外務省は11月5日、シンポジウム「国連と日本のPKO20年~新たな課題への対応~」を都内の国連大学で開催した。基調講演したエルベ・ラドスー国連平和維持活動(PKO)担当事務局長(写真)は「国連が1992年にPKO局を設置してから20年。PKOはいまや、従来の停戦活動から、『平和構築を含めた活動』へと多様化、複雑化している。日本にはこれまで以上の人的支援を期待したい」と述べた。
ラドスーPKO局長によると、冷戦終結後の紛争の形態は、国家間の紛争から「国内紛争と国際紛争との混合型」へ変わってきたという。
これに伴いPKOの形も変化。国連がPKO局を設置する前は、米国を中心とする多国籍軍が国家間の紛争を止めさせるというのが主な活動だった。ところが多国籍軍は、ソマリアの内戦や1991年の湾岸危機など過去の紛争で停戦活動をしたものの、敵対する武装勢力による子どもの徴兵や大量虐殺、女性住民のレイプなどを防げなかったという点で失敗したと評価されている。
こうした反省からPKOは、従来の停戦監視や兵力引き離しによる敵対行為の再発防止などの任務だけでなく、平和構築・復興に寄与するさまざまな活動も進めるようになった。具体的には、元兵士のDDR(武装解除・動員解除・社会復帰)をはじめ、治安部門の改革、独立後の国家が法治国家として生まれ変われるようなプロセスの促進などだ。
多様化・複雑化するPKOに欠かせないのが人材の確保だ。停戦後の新政府の樹立や法の整備、経済の活性化などを支援するには、多岐にわたる分野の専門家の協力が必要となっている。
そのためにはドナー(援助国・機関)からの資金供与が不可欠。2010年を例にとると、日本は12億600万ドル(約1000億円)をPKOに拠出したが、これはPKO予算の12.5%を占め、米国に次ぐ2位だった。しかし日本からの派遣人数は527人と、PKO全体の0.5%にとどまっている。
ラドスーPKO局長は、日本のこれまでの資金協力に感謝しながら、「警察や医療の分野で日本がもつ組織作りのノウハウや技術・知識は優れている」とさらなる協力を要望。紛争地での平和維持・復興にはとりわけ女性の自立や社会復帰が重要なことから「(日本政府には)紛争国の高官の能力開発の研修だけでなく、警察官や医療分野での女性要員の派遣を増やすなど、人的な支援を期待したい」と訴えた。(依岡意人)