欧州で広がる金融取引税(FTT)導入の動きを「正しい方向への一歩」とクリスティーヌ・ラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事が支持したことを受け、国際NGOのオックスファムは10月11日、ラガルド専務理事の発言を歓迎する声明を発表した。
オックスファムのスポークスパーソン、セバスティアン・フォーミィ氏は「FTTに対する政治的なモメンタム(勢い)が拡大しているのは明白だ。IMFが影響力を行使して欧州でFTT導入プロセスが加速するよう促し、また他の国々もこの流れに合流することをオックスファムは呼びかける」と述べた。
FTTとは、金融機関が株や債券を売買する際に低率の税金をかけるもので、国境を越えて展開される経済活動に課税し、その税収を開発支援などに活用する「国際連帯税」のひとつ。十分に課税されていないセクターから新たな歳入を得ることができ、その財源で財政難に悩む国を支援するというのが狙いだ。
10月9日に開かれた欧州連合(EU)財務相理事会では、ユーロ加盟17カ国のうち、ドイツやフランス、イタリア、スペインなど11カ国がFTTの導入に賛同した。ただ、欧州最大の金融ハブであるロンドンを抱える英国は、FTTの導入に同意しておらず、FTTが一部の国で先行して始まった場合、英国や欧州以外などFTT未導入の国に金融取引が流れる可能性もある。
EUのFTTでは、株や債券の取引額の0.1%、金融派生商品(デリバティブ)の取引額の0.01%を課税する。日本の金融機関も、導入国の金融機関と取引すると課税対象になる。EUは、金融取引に対する課税がEU加盟国すべてに適用された場合、2014年に最大570億ユーロ(約5兆8000億円)の税収を得られると試算している。
FTTへの賛同を示した11カ国の間で、金融取引税による歳入の配分先や使途についての合意はまだだ。オックスファムのフォーミィ氏は「この金融取引税が真に“ロビンフッド(中世イングランドの伝説上の義賊)・タックス”となるためには、税収の多くが、いまの経済危機の発生に加担していない世界中の貧しい人々への支援に用いられる必要がある」とくぎを刺した。
ラガルド専務理事は10月11日夜、東京で開催中のIMF・世銀総会での世界の市民社会との政策対話イベント「タウンホール会合」で、FTTが欧州で導入されつつあることについて「正しい方向への一歩であり、より多くの国がこの流れに乗るべきだ」と発言した。(長光大慈)