一家の大黒柱は「小1中退の17歳の娘」、先が見えないヤンゴンの母子家庭

ヤンゴン市北部のシュエピタ地区で暮らすライライウィンさん(38)と2人の息子。娘は仕事のため不在

「できることならこの家を出たいけど‥‥。将来のプランはないわ」。顔を曇らせ、こう話すライライウィンさん(38)はシングルマザーで、生活費と息子の教育費を娘の収入に頼る。母親として子どもを養育する責任を捨てざるを得ない状況にもがく。

ライさんは14歳で母親の死に直面。そこから負の連鎖が始まった。結婚する直前に父も他界。その後、3人の子どもを授かったが、徐々に生活水準が低下。養育費すら払えなくなった。ヤンゴン市西部のバハン地区から引っ越すことになる。

移り住んだ先はヤンゴン市北部のシュエピタ地区。まもなくして、追い打ちをかけるように夫が死んでしまう。頼る人が次々と亡くなり、娘1人、息子2人とともに困窮した生活が始まった。

ライさんは現在、オーダーメイドの縫製、市場での果物の販売、隣人の店の手伝いなど、季節や状況に応じた仕事を転々とこなす。安定した職に就いていない。月収は6万チャット(約5000円)で、ミャンマーの平均月収である9万チャット(約8000円)の3分の2。しかしライさん一家の1カ月の出費は15万チャット(約1万2000円)。彼女の稼ぎで足りない分は、ライさんの17歳の娘が補う。娘の収入は、ライさんの所得の約2倍の13万チャット(約1万円)。事実上、一家の家計を支える大黒柱だ。

娘は、家から車で40分ほどかかるヤンゴン市ラインタヤ地区の家具工場で働く。同時に、母のライさんがデンジマーケットで仕入れた衣類を、工場の労働者に売りさばく。朝6時に家を出て、帰宅するのは夜8時。ライさんは「娘は疲れて、仕事への意欲がない時もあるわ」と語る。そんな娘にライさんがかける励ましの言葉は「大変だと思うけど、あなたが頼りなの‥‥」。

ライさんが母としての責任を全うできないのは収入面だけではない。教育面もだ。

実は、娘は小学校1年生で中退した。娘に教育を与えず、働かせ続ける現実。2人の息子もかつては学校に通っていたというが、現在は休学中。その原因は、ライさんが病気にかかったため。子どもを学校に送迎できなくなり、子どもは学習機会を失った。

ライさんは、3人の子どもの母として養育する責任が果たせない不甲斐なさと、不幸の末に陥った困窮生活に挟まれ、苦悶する。一家の日常が好転する兆しは見え難い。