ジンバブエのトラック市場を栗山自動車が独占へ! 「唯一の仕入れ先」へ正式契約

左からタブカモータースのデュベCEO、栗山自動車の栗山義広社長、マシャヤモンベ議員。栗山社長は「ジンバブエへの愛国心の強さ、自国の産業を活性化したいという熱い思いを感じる。大型取引となるので、しっかりと準備して進めていきたい」と意気込みを語る

中古トラックを販売する栗山自動車(東京・江戸川)はこのほど、ジンバブエの政府系企業タブカモータースとビジネスパートナー提携合意書を締結した。外貨不足を理由に海外への送金に対する規制が強化されるジンバブエで、タブカは唯一、海外から車を輸入できる会社だ。栗山自動車海外事業部の中嶋謙次係長は「タブカは栗山自動車をトラックの唯一の仕入れ先とした。ジンバブエのトラック市場を栗山自動車が事実上、独占することになる」と話す。

■トラクターやシャベルカーも

栗山自動車とタブカのビジネスパートナー提携合意書は、在日ジンバブエ大使館で調印された。同席したジンバブエ大使館のロイド・シトーレ参事官は「こうしたビジネスが進むことは喜ばしいこと。大使館としても推進していきたい」と述べ、ジンバブエ国内での自動車販売を活性化させるための日本企業との取引を歓迎した。

タブカは、中古トラック以外にも、農業機械(トラクターなど)と建設機械(シャベルカーなど)も栗山自動車から仕入れる。中嶋係長によると、タブカは、トラクターを1万台規模で栗山自動車に発注する予定。栗山自動車はこれまで、農機や建機を扱ってこなかったが、すでに調達に動いている。ただタブカは、乗用車に限っては中古車販売会社トップランク(東京・中央区)から買い付けるという。

栗山自動車とタブカの最初の取引はすでに始まっている。ジンバブエ政府のマシャヤモンベ議員、タブカのムティディスィ・デュベ会長とスメリー・デュベ最高経営責任者(CEO)が10月21日に来日。第一便として中古トラック4台の頭金を支払った。マシャヤモンベ議員によると、第一便の車両がジンバブエに到着する際は、政府関係者、官僚、日本大使などを招待し、セレモニーを開催する。

■4カ月のスピード商談

両社が取引するきっかけとなったのは、いまから4カ月前に都内で開かれたフォーラムでの出会いだった。栗山自動車の中嶋係長が6月半ば、「SADC(南部アフリカ開発共同体)-日本 ビジネス投資フォーラム」でマシャヤモンベ議員と、タブカの親会社であるリバーバレープロパティーズのスメリー・デュベCEOと商談したことに遡る。

マシャヤモンベ議員とデュベCEOは、ジンバブエをはじめ南部アフリカの中古車市場がビィ・フォワード(東京・調布)にほぼ独占されている状態から、自国に利益を還元しようと、自国企業と日本企業の直接取引を推進するために来日していた。リバーバレーはその後、車両販売を担うタブカを設立。マシャヤモンベ議員とデュベCEOは月に1~2度、日本を訪問している。

ジンバブエは、公式レートで2億%超のハイパーインフレが起きたため、2009年にジンバブエ・ドルを廃止。米ドルを法定通貨として使っている。しかし米ドルを発行できないため、米ドル不足が深刻化。ジンバブエ政府は5月から、米ドルの持ち出しを規制したり、品目別に米ドル送金が可能な優先順位を設定したりするなど規制をかけている。機械、食料、燃料などが優先されるのに対し、車両は優先順位が低い。

ビジネスパートナー提携合意書は9月半ば、在日ジンバブエ大使館で締結された。左から栗山自動車の中嶋謙次係長、タオナ・ハバデ参事官、タブカのデュベCEO、ロイド・シトーレ参事官、栗山自動車の栗山義広社長、マシャヤモンベ議員

ビジネスパートナー提携合意書は9月半ば、在日ジンバブエ大使館で締結された。左から栗山自動車の中嶋謙次係長、タオナ・ハバデ参事官、タブカのデュベCEO、ロイド・シトーレ参事官、栗山自動車の栗山義広社長、マシャヤモンベ議員