寄付集めの肝は「信用」と「共感」、ファンドレイジング協会の鵜尾代表理事

セミナーのようす

「平成24年度外務省NGO研究会~国際協力NGOのファンドレイジング」セミナー(主催:外務省)が1月17日、都内で開催された。基調講演に立った日本ファンドレイジング協会の鵜尾雅隆代表理事は「NGO・NPOにとっての寄付金集めは、企業の資金集めとイコール。東日本大震災をきっかけに変わりつつある日本の寄付文化の流れをつかみ、いかに寄付を集められるか。ファンドレイザーの存在がカギになる」と語った。

日本はかつて、「寄付文化のない国」と揶揄され続けていた。その風向きが変わったのが東日本大震災だ。大参事を目の当たりにし、日本人の77%が寄付したといわれる。集まった金額は6000億円以上。ファンドレイジングの観点からすれば、震災は、寄付文化を日本に根付かせるきっかけになった。

寄付文化が浸透していくうえで特筆すべきは、寄付者の意識が変化したことだ。「助けてあげたいから」「かわいそうだから」寄付していた人たちが、寄付先であるNGO・NPOの活動内容や寄付金の使われ方に関心を払うようになった。

NGO・NPOの経営者にとっては、あまたの団体の中から、いかにして寄付先に選ばれるかは最重要の課題だ。鵜尾代表理事は「ファンドレイジングで大事なのは、寄付をお願いすることではない。自分たちの団体が実現したい夢や目標を寄付者に伝え、信用と共感を得ることだ」と、「信用」と「共感」の2つをキーワードに挙げる。

ではどうやって、寄付者から信用と共感を得るのか。鵜尾代表理事は2つの方法があると指摘する。

ひとつは報告書の活用だ。プロジェクトの現場の風景やスタッフの写真などを活動報告書に小まめに載せることで、現場の空気感を寄付者に伝えることができる。また収支報告書で、寄付金の使途をわかりやすく見せれば、寄付者に安心感を与えることも可能だ。

もうひとつは、活動現場での「ストーリー」づくりだ。鵜尾代表理事は「現場ではどんな問題があって、それがどう良くなったのか――活動の結果をひとつの魅力的なストーリーとして描くことで、活動の未来を寄付者にイメージさせることができる」と強調。「『このストーリーなら参加したい』と寄付者に思ってもらえるようなストーリーをファンドレイザーが作れるかが成功のポイントになる」と力強く訴えた。(依岡意人)