押さえておきたい2012年の国際協力ニュース(4~6月)

ganasは、押さえておきたい2012年の国際協力ニュースをまとめました。4~6月分です。6月に開かれたリオ+20が大きな注目を集めましたが、それ以外にももろもろの動きがあります。

【4月】

■インド人の3分の1、「苦痛に感じるほど貧しい」

ギャラップが2012年第1四半期に実施した調査で、10人に3人以上のインド人が生活を「苦痛」と感じるくらいの貧困を感じていることがわかった。背景にあるのは格差の問題。中等教育を受けていないインド人の35%以上、教育をまったく受けていない人の47%が生活苦を訴えている。

■世界の国内避難民、2011年は2460万人

国内避難民モニタリングセンター(IDMC)によると、紛争などを背景に、全世界で「国内避難民」となった人数は2011年で2460万人。アラブの春を受け、イラクでは200万人が国内避難民に。またアフガニスタンでは国内避難民の6割が子ども。

■ポストMDGsの国連ハイレベルパネル、議長はキャメロン英首相

2015年に目標年を迎えるミレニアム開発目標(MDGs)の後(ポストMDGs)について話し合い、指針を出す役割を求められる国連ハイレベルパネルの議長にキャメロン英首相が就任することが決まった。国連の潘基文(パンギムン)事務総長から要請を受けたもの。

■乳幼児と妊産婦の死亡率、MDGs達成は困難

世界銀行と国際通貨基金(IMF)の「グローバル・モニタリング・レポート2012」によると、ミレニアム開発目標(MDGs)のうち、食料と栄養がかかわる分野で進ちょくが止まっている。とりわけひどいのが乳幼児と妊産婦の死亡率。進ちょく率はそれぞれ半分、3分の1程度。

■先進国の失業者、37%は「1年以上仕事なし」

国際労働機関(ILO)の報告書によると、先進国では失業者の37%が、失業期間が1年以上の「長期失業者」。求職意欲を喪失し、労働市場から完全に退出してしまう人も増えている。若年層の失業率がとりわけ高い。世界全体の失業者は12年末には2億人を突破する見込み。

■安全な飲料水へのアクセス、フィジーはわずか40

国連環境計画(UNEP)の報告書によると、フィジーやパプアニューギニアでは安全な飲料水へのアクセスはそれぞれ40%、47%にとどまっている。これは世界平均の半分の水準。5歳未満児の死因の1割は水に関係しているとみられる。

■途上国の中小企業を支援するファンド、IFCなどが創設

国際金融公社(IFC)や英国国際開発省(DFID)などが、途上国の中小企業を支援するファンド「グローバルSMEファシリティー」を創設した。向こう10年で、アフリカや南アジアなどの中小企業60万社に融資する。対象となる企業の4分の1は女性経営者にする。

【5月】

■妊産婦の死亡数、20年で半減も年間29万人

国連人口基金(UNFPA)などの報告書によると、妊娠や出産などによる合併症が原因で死亡する女性の数は、2010年は28万7000人と、90年の54万3000人からほぼ半減した。ヘルスワーカーへの投資や産婦人科へのアクセス向上が寄与したもの。ただインドでは5万6000人、ナイジェリアでも4万人の妊産婦が2010年に命を落としている。

■OECD加盟国の大学卒業者、6割は女性

経済協力開発機構(OECD)の報告書では、OECD加盟国の2009年の大学卒業生の6割は女性で、男性を上回った。ただ労働実態を比べると、雇用率は女性のほうが男性より13%低く、また賃金も男性より16%低い。子育てを可能にするフレキシブルな労働形態の導入が求められる。

【6月】

■生活最悪指数、最悪はネパールとアフガニスタン

ギャラップの調査によると、アジア諸国で「生活最悪」指数が最も高いのはネパールとアフガニスタンだった。以下、インド、スリランカ、パキスタンの順。最も低いのはタイ。また、中東・北アフリカ地域に限定して「身体的幸福度」(身体的痛みと感情的悲しみを感じる頻度)指数を調べたところ、最低はイラク。最高はアラブ首長国連邦(UAE)とクウェート。

■世界では2700万人が「奴隷状態」、ひどいのは北朝鮮やキューバ

米国務省の「2012年人身売買報告書」によると、世界では現在も2700万人が「奴隷状態」にあるという。報告書は、人身売買の深刻さを4段階に区分しているが、最低ランクとされたのは北朝鮮、キューバ、リビア、シリアなど。

■最大の難民発生国はアフガニスタン、2011年だけで270万人

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報告書によると、2011年の最大の難民発生国はアフガニスタンで270万人。以下、イラク140万人、ソマリア110万人、スーダン50万人、コンゴ民主共和国49万人と続く。一方、難民の最大の受け入れ国はパキスタン(170万人)。このほか、イラン89万人、ドイツ57万人強、ケニア57万人、チャド37万人など。難民の8割が近隣国へ逃げている。

■リオ+20、グリーン経済の重要性など成果文書を採択

リオ+20で採択された成果文書「我々の求める未来」の骨子は、「グリーン経済は持続可能な開発を達成するうえで重要なツールで、これを進めるために各国は適切なアプローチを選択できる」「持続可能な開発に関するハイレベル・政治フォーラムを創設する」「持続可能な開発目標(SDGs)について政府間交渉のプロセスを立ち上げる」など。

■日本政府、強靭な社会づくりなど「緑の未来イニシアティブ」発表

リオ+20で、玄葉外相は「環境未来都市の世界への普及」「世界のグリーン経済移行への貢献」「強靭な社会づくり」を3本柱とする「緑の未来イニシアティブ」を発表した。3年間で60億ドル(約5600億円)を拠出する。

■リオ+20のコミット総額は48兆円、うち30兆円はエネルギーへ

リオ+20で、各国政府や民間企業、市民社会が資金調達についてコミットした金額は総額で5130億ドル(約48兆円)に上った。このうち3230億ドル(約30兆円)は、国連事務総長が声明を出した「万人のための持続可能なエネルギー」イニシアティブに振り向けられる。

■過去20年の災害被害、被災者は世界人口の64

国連国際防災戦略(UNISDR)によると、リオの地球サミットが開かれた1992年からの20年間で、世界の災害被害は、少なく見積もっても死者130万人、被災者44億人(世界人口の約64%)、経済損失2兆ドル(約186兆円)にのぼる。急激な都市化、環境悪化、気候変動、グッドガバナンスの欠如などが要因。

■「災害リスク管理」が重要、開発政策でG20

メキシコ・ロスカボスで開かれたG20サミットで、「災害リスク管理」が開発政策の中で重要だと強調された。世界各地で急増する自然災害の被害に懸念を示したもの。自然災害による損失額は2011年、全世界で3800億ドル(約35兆円)と推定され、これは過去最悪。

■再生可能エネルギーの雇用創出、400万人との試算

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の報告書は、「全ての人に持続的なエネルギーを2030年までに供給する」という国連の目標によって、オフグリッド(電力網と連係しない)電力部門だけでも最大400万人の雇用を創出できるとした。

■中国やBRICSなどの新興ドナー、リオ+20で存在感

リオ+20には190カ国以上の代表が参加した。注目を集めたのは、中国やインド、ブラジルなどの新興ドナー。中国を例にとると、2010年の海外援助総額は少なめにみても39億ドル(約3600億円)。またBRICS諸国が10年に供与した援助額は前年比19%増えた。これはOECDに加盟する伝統ドナーの援助額の伸び率1.5%(11年はマイナス3%)を大きく上回る。