UNDPの人間開発指数、最下位はニジェールとコンゴ民主共和国

■サブサハラがワースト10独占

国連開発計画(UNDP)は3月14日、保健、教育、所得のデータをもとに187カ国・地域の開発度合いを算定・定量化した、2012年の「人間開発指数」(HDI)を発表した。トップに輝いたのはノルウェー。これを、オーストラリア、米国、オランダ、ドイツ、ニュージーランド、アイルランド、スウェーデン、スイスなどが追う。日本は前年に続く10位で、アジア首位をキープした。

主な国のランキングをみると、シンガポール18位(東南アジアで首位)、英国26位、カタール36位(中東で首位)、チリ40位(南米首位)、パラオ52位(大洋州首位)、ロシア55位、ブラジル85位、中国101位、ガボン106位(サブサハラアフリカ首位)、エジプト112位、シリア116位、南アフリカ121位、インド136位、ミャンマー149位、ハイチ161位、アフガニスタン175位など。

最下位(186位)はニジェールとコンゴ民主共和国。アフガニスタンを除くワースト25をサブサハラアフリカ勢が独占した。

ただUNDPの「人間開発報告書2013」によると、2000年と比べて、HDIを年率2%以上上昇させたのは14カ国あり、そのほとんどがサブサハラ諸国だった。高い順から、アフガニスタン、シエラレオネ、エチオピア、ルワンダ、アンゴラ、東ティモール、ミャンマー、タンザニア、リベリア、ブルンジ、マリ、モザンビーク、コンゴ民主共和国、ニジェール。HDIの進歩の速度は、低位・中位国のほうが速い。

先進国を含め、12年のHDIが00年の水準を下回った国はない。だが先進国・途上国を問わず、国内格差が大きいことが懸案事項のひとつになっている。たとえば米国では、国全体のHDIは0.94だが、ラテンアメリカ系住民の平均値は0.75、アフリカ系住民は0.70にとどまっている。南欧では、ロマのHDIが低いという現実がある。

■南アジアとサブサハラが高い伸び率

HDIの地域別特性をまとめると、次のようになる。ここでは途上国をアラブ、東アジア・太平洋、東欧・中央アジア、ラテンアメリカ・カリブ、南アジア、サブサハラアフリカの6つの地域に分けた。

【アラブ】
平均HDIは0.652。6地域中4位。00年以降のHDIの年間平均上昇率はイエメンがトップ(1.66%)。人口に占める雇用の比率をみると、アラブ諸国は52.6%と6地域で最低で、世界平均の 65.8%を大きく下回る。

【東アジア・太平洋】
平均HDIは0.683。00~12年のHDIの年間平均上昇率は1.31%。国別では東ティモールの上昇率が2.71%で最も高く、ミャンマーが2.23%で続く。人口に対する雇用の比率が74.5%と、6地域で最も高い。

【東欧・中央アジア】
平均HDIは0.771。6地域で最高。人口に対する雇用の比率は58.4%と、6地域中2番目に低い。

【ラテンアメリカ・カリブ】
平均HDIは0.741。6地域中2位。ギャラップの世論調査による総合生活満足度は6.5(10段階評定)と6地域のなかで最も高い。

【南アジア】
平均HDIは0.558。6地域のなかで下から2番目。ただ00~12年のHDIの年間平均上昇率は1.43%と、6地域中最も高い。国別ではアフガニスタンの伸び率が最も高く(3.9%)、次いでパキスタン(1.7%)、インド(1.5%)の順。

【サブサハラアフリカ】
平均HDIは0.475。6地域で最低。ただ上昇ペースは速まっている。00~12年のHDIの年間平均上昇率は1.34%で、南アジアに次ぐ2位。シエラレオネ(3.4%)とエチオピア(3.1%)の伸びが最も大きい。

■ジェンダー不平等はイエメンが最悪

人間開発報告書 2013はまた、HDIに加えて、「ジェンダー不平等指数」(GII)と「多次元貧困指数」(MPI)の2つの指標も掲載している。

GIIとは、リプロダクティブヘルス(性と生殖に関する健康)、女性のエンパワーメント、労働市場への参加にかかわるデータをもとに、各国のジェンダー不平等を測ったもの。

GIIが最も低い国(ジェンダー不平等が最も小さい)のはオランダだった。スウェーデンが2位。スイスとデンマークが3位で続く。日本は21位だった。最下位(148位)は、アラブのイエメン。これに続くのがアフガニスタン(147位)、ニジェール(146位)、サウジアラビア(145位)、コンゴ民主共和国(144位)など。アラブとサブサハラアフリカで女性の地位の低さが目立った。

MPIは、基本的な家庭用品や住居、成人の識字率、児童の就学状況、乳幼児の死亡率、清潔な水と電力などの衛生設備の利用状況などをもとに、貧困の全容をより浮かび上がらせるもの。MPIは、入手可能な世帯調査データが国によって大きく違うため、国別ランキングは出さない。

MPIの対象となった104カ国の合計人口のうち30%以上に相当する約15億6000万人が多次元貧困下で生活していると推計される。「MPI貧困層」の割合が最も大きかったのは、エチオピア(87%)、リベリア(84%)、モザンビーク(79%)、シエラレオネ(77%)。多次元貧困者の数が最も多いのは南アジアで、インドだけで6億1200万人を数える。