円借款で日本経済を活性化、外務・財務・経産3省が改善策

外務省と財務省、経済産業省は4月15日、「円借款の戦略的活用のための改善策」を発表した。ポイントは、アジアを含む新興国の成長を取り込み、日本経済の活性化につながるよう、円借款を戦略的に展開すること。主な概要は下のとおり。

■重点分野の金利を引き下げ

日本の優れた技術やノウハウを提供できる「重点分野」で、円借款のより積極的な活用を目指す。重点分野を「環境」「人材育成」「防災」「保健・医療」の4つに見直し、適用金利を現行の 0.55~1.20%から0.01~0.6%に引き下げる。これによって借入国のインセンティブも高まる。

■STEPの要件を緩和

途上国への技術移転を通じて「顔の見える援助」を促進するため、2002年に導入された「本邦技術活用条件」(STEP)だが、この制度を改善する。

・主契約者条件の範囲を「海外にある日本企業の子会社」にまで広げる

・本邦調達比率の計算ルールを日本企業にとって使いやすくするため、「先進国にある日本企業の子会社から調達した資機材」も本邦調達比率に算入可能とする

・STEP の適用は、これまでの10 分野から、「医療機器」と「防災システム・防災機器」の 2 分野も追加する

・STEPの金利を一律0.1%に引き下げる

■中進国への円借款を拡大

中進国と中進国を超える所得水準の途上国に対し、日本の知見や技術が最大限活用できる分野を中心として円借款をいっそう活用していく。

・中進国に供与する円借款は、現在の4分野(「環境」「人材育成」「格差是正」「防災・災害対策」)に、「広域インフラ」と「農業」を追加する

・中進国を超える所得水準の途上国については、世界銀行の支援を卒業する(通常 5 年程度)までの国を対象に、日本として戦略的意義が認められる場合のみ、円借款を供与する

■「復旧スタンドバイ借款」を創設

途上国で災害が起きた際、復旧段階で発生する資金需要に対して迅速に支援できるよう「災害復旧スタンドバイ借款」を創設する。災害分野での日本の知見や技術の活用を推進する

■変動金利制を導入

中進国を超える所得水準の途上国や中進国、中低所得国に対する円借款に変動金利を導入する

■コミットメント・チャージを廃止

借款契約発効後の未貸付残高に対して年 0.1%のコミットメント・チャージを借入国に対して課してきたが、この制度を廃止する。その代わり、円借款供与時に供与金額の 0.2%をフロント・エンド・フィーとして徴収。目標期日の前に貸付完了を達成した場合は、フロント・エンド・フィーの0.1%を遡及的に免除する。

■サブ・ソブリン向けも検討

途上国のサブ・ソブリン(地方自治体や公営企業)向けの直接融資も今後、検討していく。