マラウイのジョイス・バンダ大統領は6月1日、第5回アフリカ開発会議(TICAD V)の公式サイドイベント「妊産婦の健康に対する投資の効果」で講演した。マラウイ政府は「アフリカの妊産婦死亡削減加速化キャンペーン(CARMMA)」を推進しているが、2015年までに妊産婦死亡率を「10万人当たり115人に減らす」目標の達成は依然として遠く、さらなる支援が必要だと訴えた。
「妊娠は本来なら喜ばしいこと。だがマラウイでは違う。妊婦たちは不安をもっている。死ぬかもしれないから」とバンダ大統領。自らの出産経験を振り返り、「私も死んでいたかもしれない。産後の弛緩出血で大量出血したが、迅速な医療介入のおかげで一命を取り留めた。運が良かった」と話した。
ミレニアム開発目標(MDGs)は、飢餓の撲滅だけでなく、妊産婦や新生児、幼児の健康改善も掲げている。目標達成に向け、アフリカ諸国は2009年5月、「アフリカの妊産婦死亡削減加速化キャンペーン(CARMMA)」を立ち上げた。現在は37カ国が国連人口基金(UNFPA)の支援を受け、妊産婦を死なせない活動に取り組んでいる。
バンダ大統領は大統領に就任した12年、妊産婦死亡率の引き下げを目的とする「妊産婦の健康イニシアチブ」を提唱。国と地域レベルで活動したところ、同国の妊産婦死亡率を、04年の10万人当たり984人から、2010年に同675人、13年1月には同460人まで減らすことに成功した。ただバンダ大統領は、15年までに同115人を目標に据えている。
バンダ大統領は「私たちアフリカの女性自身が妊産婦の健康問題にかかわらなければ、この状況を変えることはできない」と指摘する。妊産婦の死亡率を減らすには、妊産婦自身の健康を向上させることはもちろん、「家族計画」「貧困」「ジェンダー不平等」といった多角的な働きかけが欠かせないが、大統領は特に下の6つを重要なポイントとして挙げた。
1)家庭の収入が向上するような投資
2)少女が教育を受けられるようになる投資
3)妊産婦の健康を向上させる活動に男性を巻き込む
4)村の首長や宗教関係者など有力者の理解を得る
5)女性を、意思決定など政治に参加させ、エンパワーメントする
6)1)〜5)を実現するための政治的な枠組みを作る
講演が終わった後の質疑応答で、「アフリカの財務相はなぜ、女性に投資をしないのか」と会場から質問が出ると、バンダ大統領は「今は戦う時。財務相をすべて女性にしたらいいかもしれない。私も女性として、大統領府にいることは結構難しい」と述べた。
バンダ大統領は、マラウイ初の女性大統領。就任前は、副大統領を務めたほか、ジョイス・バンダ財団やヤング・ウーマン・リーダー・ネットワーク、ハンガープロジェクトなどを創設。2013年には米タイム誌が選ぶ「世界に最も影響力のある100人」のひとりにも挙げられた。(石岡未和)