国際NGO「プラン・ジンバブエ」のティノテンダ・ボンド氏は6月1日、第5回アフリカ開発会議(TICAD V)の公式シンポジウム「アフリカの女子教育と教育協力における日本の役割」で講演した。アフリカのさらなる発展には、女子の「早すぎる結婚」をなくし、中等教育の充実を図ることが重要だ、とボンド氏は強調した。
南アフリカに位置するジンバブエは人口1200万人。18歳以下が60%を占める若い国だ。ボンド氏は「農村部では、HIV・エイズの蔓延や、両親が出稼ぎに行くことによって、子どもだけの世帯が増えている。このため、年長の女の子が母親代わりになり、家事全般をしなければならない。こうした状況だと、女子は早すぎる結婚、男子は児童労働や不法な出稼ぎなどに従事する傾向が強い」と説明した。
とりわけ干ばつが多発する地域の住民は、ドナー(援助国・機関)からの食糧援助に依存している。貧困から抜け出そうと、「roora」(ルーラ)と呼ばれる結納金目当ての早すぎる女子の結婚が後を絶たない。かといって都心部では、貧困もより深刻で、また性取引に巻き込まれるケースも少なくなく、「早すぎる妊娠」の危険に直面するのが現実だ。
早すぎる結婚を減らす重要なカギのひとつは女子への教育だ。ところが意外にも、ジンバブエはアフリカの中では基礎教育はそれなりに普及している。ボンド氏によれば、ジンバブエの識字率は97%で、これはアフリカで2番目に高い。英国から1980年に独立した後、ジンバブエ政府は教育制度の確立に投資したためで、初等教育レベルではジェンダー差別はないという。
問題は、教育をいかに女子差別の撤廃と女子の健康改善につなげるか。残された課題としてボンド氏は、卒業試験の合格者の割合が小学校で18%、中学校で22%と低いことを挙げた。
その理由は、「教師が不足するなど、環境が整っておらず、授業についていけない子どもがいること」「早すぎる結婚・妊娠で女子は中退を余儀なくされること」「学費の負担が重いこと」「両親が男子の教育を優先し、60%の女子が中学の卒業試験まで残らないこと」などだ。国際援助が初等教育と高等教育に集中しているのも良くない、とボンド氏は指摘した。
シンポジウムの参加者からは「日本の政府開発援助(ODA)に占める基礎教育分野の援助額の割合は低い。教育分野への拠出を増やす必要がある」との声が上がった。(石岡未和)