国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は6月19日、 難民などの実態をまとめた年間統計報告書「グローバル・トレンド2012」を発表した。このなかで、紛争などによって家を失い、「難民」「国内避難民」「庇護申請者」になった人の数が2012年末時点で4520万人以上に上ったことを明らかにした。
シリアやマリをはじめ深刻化する紛争を背景に、難民や国内避難民などの数は増加傾向だ。今回の数字は、前年の4250万人を上回っただけでなく、1994年以来18年ぶりに多い水準となった。単純計算すると、世界人口のおよそ160人に1人が故郷を追われ、生活していることになる。
4520万人の内訳をみると、国内避難民が全体の6割以上を占める2880万人。コンゴ民主共和国やシリアで増え続けていることから、過去20年で最も多い数字となった。このうちUNHCRの支援を受けられているのは1770万人。
難民は1540万人。最も多い数を出している国はアフガニスタンで約258万人。アフガニスタンは32年連続で最大の難民発生国となっている。これに続くのが、ソマリア114万人、イラク75万人、シリア73万人、スーダン57万人、コンゴ民主共和国51万人、ミャンマー42万人、コロンビア39万人、ベトナム34万人、エリトリア29万人など。難民の46%が18歳以下の子どもだという。
こうした国の多くは紛争が起きている。UNHCRが支援する難民の55%は紛争の影響を受けているという。また近年の潮流としては、マリやコンゴ民主共和国、スーダンから、南スーダンやエチオピアへ避難する動きが目立つ。
一方、難民の受け入れ国をみると、最大は依然としてパキスタン。その数は160万人と断トツだ。以下、イラン87万人、ドイツ59万人、ケニア56万人、シリア48万人(他国から難民を長年受け入れてきた)、エチオピア38万人、チャド37万人、ヨルダン30万3000人、中国30万1000人、トルコ27万人の順。アフガニスタン難民の95%を、隣国のパキスタンとイランが庇護している。
報告書によると、UNHCRが支援対象とする難民を受け入れている国の半数は、1人当たり国内総生産(GDP)が5000ドル(約48万円)以下だという。これはだいぶ前から、難民を受け入れるのは先進国ではないことを意味する。実際、難民を受け入れる途上国の比率は、10年前は70%で、いまや81%に高まっている。
庇護申請者は93万7000人だった。
12年の1年でみると、新たに難民となったのは110万人、国内避難民は650万人だった。これは、4.1秒に1人が難民または国内避難民になる計算だ。