7月21日に投票日を迎える参院選。各党は「国際協力」についてどんな政策を掲げているのか。開発メディアganasは、各党のマニフェストの中から政府開発援助(ODA)にかかわる部分をピックアップし、内容を徹底比較した。2回にわたってお届けする。
1回目は、自民党、公明党、民主党、日本維新の会、共産党の5党を取り上げる。自民、民主両党は、「クールジャパン」戦略を柱とする海外市場の攻略を掲げ、公明は「人間の安全保障にODAの20%を配分する」ことを約束。日本維新の会は「ODAの減少に歯止める」と打ち出し、共産党は、原子力発電所の輸出に反対する姿勢を鮮明にした。
■自民党
自民党は「政権公約」の中で9つの重要政策を示した。7ページを割いた経済政策に比べ、外交・防衛はわずか3ページ。ODAを戦略的に活用し、日本企業の途上国進出を支援することを強調している。
・ODAの戦略的活用として、途上国に対する支援を強化しながら、中小企業を含む日本企業の海外展開支援や資源外交を積極的に推進する。
・新興国の成長を最大限取り込むため、2018年までに、自由貿易協定(FTA)比率を70%に高める(現状は19%)。
・「国際平和協力一般法」の制定を目指す。
・「クールジャパン戦略」を推進し、海外市場を獲得する。
・2020年に30兆円のインフラシステムの受注(現在は10 兆円)を実現すること、2018年までに放送コンテンツ関連の海外売上高を現在(63億円)の3倍に増やすこと、2020年に海外の医療技術・サービス市場で1兆5000億円(現在は5000億円)の売り上げを獲得することを目指す。
■公明党
公明党は「重要政策」の中で5つの項目を挙げた。「対外政策」「経済回復」「社会保障・教育改革」の3つの分野に、国際協力についての記述がある。
・PM2.5や黄砂、酸性雨などの解決に向け、日中韓3カ国で、研究・技術・教育面での協力や自治体間の交流などを進める。
・「人間の安全保障」(環境破壊、人権侵害、紛争、貧困などの脅威から、個人を守るべきだとする概念)にODAの20%を優先配分する。
・日本企業がリードするスマートシティ開発、基礎インフラ、スマートインフラ(温室効果ガスを出さないビルや住宅、交通機関)、生活インフラ(上下水道、廃棄物処理など)などの低炭素技術・ノウハウをパッケージ化して輸出。アジア太平洋地域で低炭素都市・地域づくりを推進する。
・日本のモノやサービスを海外に売り出すクールジャパン戦略と、外国人観光客を国内へ呼び込む観光振興を結びつけた「クールジャパン観光」を推進する。
・大学教育では、秋入学やギャップイヤーの導入で、海外への留学生数を倍増させる。留学奨学金などの経済支援も拡充する。
■民主党
民主党は「重点政策」で7つの政策を掲げた。外交防衛では「国際社会の平和と安全に積極的に貢献する」とうたうが、開発援助の記述は他党と比べて少ない。
・インフラのパッケージ型輸出、エネルギーの調達先多様化など、戦略的な経済外交を推進する。
・國酒プロジェクト(日本酒・焼酎の魅力の認知度の向上と輸出促進を目的とする事業)、クールジャパンなどを進める。
・ODAを活用した海外展開支援を、中小企業担当大臣の下で推進する。
■日本維新の会
日本維新の会が「参議院選公約」で国際協力について掲げたのは下の通り。さほど多くない。
・海外発信力を強化し、日本の文化や技術、エンターテイメントの魅力を活かした「ソフト・パワー外交」を展開できる基盤を強化する。
・ODAの減少に歯止めをかけ、環境破壊、感染症、貧困、気候変動、災害対策などの課題に、日本の経験や技術力を活かして積極的に取り組む。
■共産党
共産党は、「改革提言」の中で、経済・社会保障、原発、外交、憲法、歴史観の5つの争点を設けた。ただ国際協力の記述はあまりなく、あえていえば、「原発輸出の中止」「核兵器禁止条約(NWC)の国際交渉開始を世界に呼びかけること」「憲法9条の堅持」など。