貧困撲滅のカギは女性、UN WOMENの新事務局長が強調

「貧困との闘いで女性が中心にならなければ、人類は貧困撲滅の目標を達成できないだろう」。これは、ジェンダー平等と女性の権利向上を目指す国連組織UN WOMENの新事務局長プムズィレ・ムランボ・ヌクカ氏の言葉だ。ガーディアンは7月30日、ムランボ・ヌクカ氏をフォーカスする記事を掲載した。

南アフリカ出身のムランボ・ヌクカ氏は「開発アジェンダはもちろん、女性の権利向上だけではないことはわかっている。女性問題はマンネリ化しているとの指摘もある。ただポスト・ミレニアム開発目標(MDGs)でも重視される貧困削減で、女性は大きな役割を果たす」と強調する。

ところが、とりわけ途上国では女性を取り巻く状況は厳しい。アフガニスタンやコンゴ民主共和国、インド、パキスタン、ソマリア、南アフリカなどでは、法律の理論と女性が日々送る現実との間には大きなかい離がある。

たとえばインターネットを使った人身売買でも被害者の多くは女性だ。レイプ事件も各地で頻発している。女子の成長を阻害する児童婚の習慣も一部の地域では根強く、途上国の女子9人に1人が15歳までに結婚させられるとの国連データもある。1日800人が命を落とす妊産婦死亡率の高さ、教育へのアクセスの低さなども深刻だ。

「紛争地などでは、レイプは、女性に対して使われる武器のひとつになっている。加害者は刑罰を受けない」とムランボ・ヌクカ氏。「レイプ犯が目の前にいるとする。女性が金持ちか貧乏人か、教育を受けているか受けていないかは関係なく、すべての女性が危機に直面するのがレイプだ」と説明する。

UN WOMENは2010年に誕生したばかりの国連組織。女性を守る活動を展開するにも、資金難という物理的な壁だけでなく、それぞれの国の伝統や宗教、文化といった“古い壁”がそびえたつ。女性の権利向上を唱えれば、「フェミニズムだ」と非難する向きもある。

ムランボ・ヌクカ氏は2005~08年に南アフリカの副大統領を務めた女性政治家。同じく南アフリカ出身の女性であるヌコサザナ・クラリス・ドラミニ・ズマ氏が昨年、アフリカ連合(AU)委員会委員長に就任したが、アフリカの政界で活躍する女性はまだまだ少ない。アフリカ55カ国を見渡しても、女性の国家のリーダーは、リベリアのエレン・ジョンソン・サーリーフ大統領とマラウイのジョイス・バンダ大統領の2人しかいない。