フィリピンのセブシティ中心部に、「ホワイトイー」という韓国人歯科医が経営する歯科クリニックがある。オーナー兼医師のリュウ・ジャエ・ゴン氏(34)は2013年8月から、日本人観光客を主要な顧客とする方針を打ち出した。日本人の通訳兼マーケティングマネージャーまで雇うという力の入れようだ。
「韓国人は、セブに来て、観光ついでに、歯のホワイトニングをしていく。午前はホワイトニング、午後はビーチといったように。理由は、韓国で施術するより安いからだ。日本人にとってもセブはメジャーな観光地。僕たちならば、日本で受けるより安くサービスを提供できる。近いうちに日本人もセブにホワイトニングしにくるだろう」。リュウ氏は意気揚々とこう話す。
ホワイトイーは、リュウ氏のほか、フィリピン人歯科医2人、フィリピン人歯科助手4人、日本人のマーケティングマネージャー兼通訳1人という体制だ。ホワイトニングの価格は1万2000ペソ(約2万6000円)。決して格安ではないが、そのぶん品質を担保しているという。
「ホワイトニングに使う資材はアメリカ製や日本製を用いている。質の高いサービスを提供している」とリュウ氏は胸を張る。清潔に管理された小さなクリニックには、取材中もひっきりなしに韓国人がホワイトニングを受けに来ていた。
韓国は美容大国として知られる。だが国内市場は競争が厳しい。過酷な市場競争に見切りをつけ、新たな新天地を求めて海外に飛び出す韓国人は多い。セブには、韓国系歯科クリニックが、ホワイトイー以外にも4つある。ただリュウ氏が言うには、他のクリニックは日本人をターゲットにしていない。「だから僕が開拓する。パイオニアになる」。リュウ氏の戦いは、韓国を出てもなお続いている。
韓国政府の2011年のデータによると、フィリピンで暮らす韓国人は9万6000人強に上る。一方、フィリピン在留邦人の数は1万8000人弱と、その5分の1以下にとどまっている。(セブ=後藤陽)