カンボジア・シェムリアップに、地雷で右足を失いながらも、努力を重ねてビジネスを立ち上げ、成功している青年起業家がいる。ムイ・セウ・ベルさん(35)だ。
彼は7歳のとき、地雷を踏んで右足を失った。「生きたくない。死にたい」と何度も思った。なんとか高校を卒業したときにはすでに21歳。だがそのとき、またも悲惨な現実が待ち受けていた。ホテルをはじめいくつかの仕事に応募するも、右足がないことが障害となって、仕事にありつけなかった。
そんな彼は「自分が生きていくためには教育しかない」と考えて、大学へ進学。経営学と経済学の2つの学位を取得した。在学中に、外国人観光客向けのブレスレットやネックレスといったジュエリーを生産・販売するビジネスを立ち上げた。高い商品で100ドル(約1万1000円)にもなるラインナップが強みだ。ビジネス成功の秘訣を「ユニークな商品を常に作り続けることだ」と語る。
ただ、右足を失ったことは結婚でも障害となった。当時交際していた女性の両親には「あなた(ベルさんのこと)はまともに仕事ができないから、お金を稼げないでしょ」と思われ、結婚に猛反対される。そんな逆境を乗り越え、なんとか結婚し、今では一男一女にも恵まれる。
お金が稼げないと思われていた彼だが、最もビジネスが好調だった2008年頃には月に4000ドル(現在のレートで約45万円)を稼いでいた。今では、激しい競争にさらされて、月収は800ドル(約9万円)程度になってしまった。それでも、平均月収が100~200ドル(約1万2000~2万4000円)程度のカンボジアで彼は”成功者”の部類に入る。
そんな彼にこれからの目標を聞いてみると、「結婚に反対されていたこともあるので、お金を稼ぎ続けて、家族の生活を守ることだ」と控えめに語る。