ミャンマーに伝わる伝統医薬品は、そのカタチと原料が西洋医療の医薬品と大きく異なる。利用するミャンマー人の中には、西洋医療の薬との併用や、予防のために伝統医療の薬を飲む人もいるほど、体への負担も少ない。
ヤンゴン・ヤンキン地区で伝統医薬品の生産・販売を手がける「メガパワー」は20種類以上の薬を作っている。直営販売店の棚を見て驚くのはそのカタチの豊富さだ。例えば、神経系の薬は緑色のジャム状になっている。パンやご飯と一緒に食べることが可能。この薬は主にアロエからできており、少し苦みのある味だ。
別の棚には、木の枝をそのままお茶やスープに入れれば認知症の予防になるといわれる薬が置かれている。さらにその下の棚には、においを嗅ぐだけで頭痛を治せたり、マッサージにも使えたりする薬が売られている。他にも、飲み薬として飲めば腸をきれいにし、塗り薬として使えば切り傷などを治せる薬まであるという。また、同じ種類の薬でもそれぞれ錠剤、カプセル、粉薬などさまざまなカタチが用意されており、その人の好みにあったものを選ぶことができる。
これらの薬は、ハーブを中心に、ターメリックやシナモンなどのスパイスを加えて作っている。原材料はすべて料理に普段使うものなので、病気でない人が飲んでも害はないのが特徴だ。西洋の薬品に比べると副作用も少ない。
伝統医薬品の使用者は25歳以上の人が大半とマーケットは限られている。伝統医薬品に批判的な見方が多いのも事実だ。しかし一方で、余命宣告を受けていた患者が回復したという例もあるという。西洋医療の観点から伝統医薬品の効果を調べているケン・ウ・モンさん(24)は「錠剤は好きではないので、さまざまな形状があるのは嬉しい。ハーブなので安心。伝統医薬品の効果を証明したい」と語る。
メガパワーのスタッフのキン・キンヤダナ・シュウィ・シンさん(23)によると、一定の時間を空ければ、西洋の薬を服用しながら伝統医薬品を飲むこともできる。このため西洋の薬と併せて試すミャンマー人もいるという。