経済の成長率が高ければ高いほど、短いスカートが流行する――。経済学にはこんな“うそから出たまこと”のようなセオリーがある。「スカートの丈」と「経済成長率」が相関関係にあるわけなのだが、どうしてどうしてこれがなかなか言い得て妙なのだ。
日本を例にとってみても信ぴょう性の高さはよくわかる。戦後の高度経済成長期にはミニスカートブームが巻き起こった。バブル絶頂期にも、いまや伝説のディスコ「ジュリアナ東京」が一世を風靡し、ミニスカートの女たちがこぞってお立ち台に上って腰をくねらせながら大フィーバー。そのすぐ下にはスカートの中身をのぞきみしたいサラリーマンが陣取り、パンチラのお礼に食事をおごるなんて光景も日常茶飯事だったらしい。
1990年代に入って経済がテイクオフした東南アジアでも、好景気はスカートの丈に多大なる影響を与えた。タイ・バンコクの街中では、ひざ上数センチのミニスカートをはいたOLたちが群れをなして闊歩し、デパートでは短いスカートの制服を着た店員がにこやかに接客。みんな豊かさを謳歌していた。
生活にちょっと余裕が出てくると、女性たちはおしゃれに走る。景気が良ければ気持ちも明るくなるのだろう、ファンデーションでお顔をととのえ、口紅をきれいに引き、ミニスカートをキュッとはいて、パアーっと外に繰り出していく。こんな気分になるのは、男の私でもわかるような気がする。ということはやっぱり、経済成長率の高さとスカートの丈の短さは、理論的に考えても比例するのだろうか。そこらへんの女心について、ぜひコメントをお寄せいただきたい。
タイをはじめとする東南アジアのバブルがいったんはじけたのは、いまから遡ること4年前、きっかけは1997年の7月に起きた通貨危機だった。震源地はタイだったが、このときおもしろいことを言った人がいた。
「タイの女の子を見てみなよ。化粧も完璧で、ミニスカートでばっちり決めているでしょ。だけどね、なぜか足元はサンダルなんだよね。タイ経済も同じ。外資におんぶに抱っこで伸びてきたけれど、なんせ足元が弱かった。そこを狙われたんだね。そしてバーツが急落した」
タイ経済はその後、順調に回復。そしてバンコクのOLは着実におしゃれになってきている。経済が伸び続けていくと、ミニスカートの次にくる流行は「ストッキング」だ。脱・生脚。バンコクやシンガポールの女性たちはずいぶんとストッキングをはくようになった。暑い国でストッキングをなんではくの?と思いきや、そこはストッキングメーカーの戦略。「ストッキングは脚をきれいに見せる力があるのよ」ということを必死にアピールしているのだ。
日本のOLは近ごろ、「ミュール」と呼ばれるおしゃれなつっかけをはいている。東南アジアではまだビーチサンダルのような鼻緒がついていたものがポピュラーで、靴のおしゃれは後回しというのが実情だ。
この鼻緒サンダル、涼しくてラクだが、おしゃれを語るうえで大きな欠点がある。ファッション性は言うに及ばず、鼻緒つきのサンダルをはき続けることで、足の親指と人差し指のあいだが広がってしまうのだ。もちろん女だけでなく男も。鼻緒のサンダルで育った庶民は、いうならば鼻緒仕様に足が変形してしまっている。上級階級の子どもは幼いころから靴をはいているので問題ないが。
サンダルをはくという行為は、はだしで生活することを意味するので、健康にはいい。だけど正直、指が広がっている足はお世辞にもカッコいいとは言えない。やっぱり靴を履いたほうがおしゃれ度はアップする。「ミニスカート」→「ストッキング」ときたから、そうなると最後の砦は「足元」。脱・サンダルで足がきれいになったとき、本当の美脚は完成するのだ。そのときタイの経済レベルはどれぐらいになっているのだろうか。
女性の脚にみる、東南アジアの経済発展。美脚を拝みたい男性たちは、経済成長率の高い国に旅行すべし。そこでたくさんの外貨を落とせば、女性の美脚にはさらなる磨きがかかる。