レバノンの首都ベイルートで11月10日、「第11回ベイルート国際マラソン」(主催:ベイルートマラソン協会)が開かれる。レースに参加したいランナーの登録を現在受け付けている。フルマラソン以外にも、1000メートル、5000メートル、1万メートルがある。昨年の大会は、85カ国から3万3000人以上のランナーが出場するなど、中東屈指のマラソン大会となっている。
ベイルートマラソン協会を創設したメイ・エル・カリル氏(TED Talks)は、国際的なマラソン大会を開く意義について「外の世界とレバノンの架け橋が作れると思った。世界のランナーたちをレバノンに呼び、平和のもとで一緒に走ってもらう。レバノンとレバノン人の本当の姿、平和への望みを見せたいと考えた」と話す。同氏も実はかつては女性ランナー。だがバスとの接触事故で走ることができなくなったという過去をもつ。
レバノンでマラソン大会を企画するのは想像以上に大変だ。平和の国・日本とは事情がまったく異なる。キリスト教徒4割が占めるこの国では1975~90年に内戦が続いた。また、北東にシリア、南にイスラエルと国境を接し、紛争は断続的に起こる。過去に戦ってきた人たちをどうやって一緒に走らせるのか、問題は山積みだった。
メイ・エル・カリル氏が国内の政治家や軍人、さまざまな宗教のリーダーらを説得して第一回大会の開催にこぎ着けたのは03年の10月19日のことだった。このときは世界49カ国から6000人以上のランナーと観客数千人が参加した。
ベイルートマラソン協会はまた、ベイルート国際マラソンのほかに、「女性たちのチャレンジ」と題した女性の権利のための定期マラソンを13年5月26日に初めて開催した。 このレースは、レバノンのワファ・スレイマーン大統領夫人の後援も受けている。時期は未定だが、来年も開かれる予定。
現在も政情不安が続くレバノン。だがベイルート国際マラソンのある日は、国中がひとつになるといわれる。この大会はいまや、レバノンのみならず、中東でも最大級の国民的イベントになった。チャンスがあれば、日本のランナーたちも、世界中から集まるランナーと心を通い合わせ、レバノンから世界の平和を願ってみてはどうだろう。(石岡未和)