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世界有数の金の産出国ベネズエラ。ブラジルと国境を接する南東部のボリーバル州にあるアマゾン地帯には、一獲千金を夢見る「ガリンペイロ」と呼ばれる金鉱採掘者らが集まってくる。密林を切り開き、土を掘り返し、金やダイヤモンドを採掘するのだ。
掘り返した土は、滑り台のような選別機に流し込まれ、大きめの砂金とダイヤモンドの原石に分けられていく。だが小さな砂金を集め、金を抽出するには、水銀を使うのが最も安くて簡単な方法。この過程で、川は水銀に汚染されていく。
水銀を使って、砂金から金を抽出する方法はこうだ。
1)砂金を得るために、川底の砂をバケツにすくう
2)金を吸着する水銀を手にとり、バケツの中の泥水と混ぜる
3)金を吸着した水銀はバケツから取り出し、バケツの底に残った水銀はそのまま川に捨てる(水銀は水生生物の体内で濃縮され、最終的に地域住民の食料となる)
4)バケツから取り出した金を吸着した水銀はフライパンの上で薄く広げ、たき火で熱する
5)水銀は蒸発し、金だけがフライパンに残る(フライパンを握る者はそのあいだ、水銀の蒸気にさらされ続ける)
水銀の蒸気から身を守るためにガリンペイロらは、顔に布を当てたり、紙製のマスクを使う。ただこうした装備が吸入防止にどれだけ効果があるのかと考えると、疑問符が付く。
水銀汚染による健康被害の防止を目指す「水銀に関する水俣条約」が10月10日、採択された。ただこの条約が本当に、水銀汚染を防止できるのかは注視していく必要がある。水銀の管理はもちろん重要だが、カギは、ガリンペイロらの生計手段をどう手当てできるか。問題の構造は、マリファナやケシのそれと似ている。ボリーバル州政府も熱帯雨林の乱伐や水銀利用を規制したい意向のようだが、他にめぼしい産業がないのが現実。為政者たちの頭を悩ませている。
水俣条約の発効には50カ国以上の批准が必要で、2016年の発効を目指すとしている。(笹川斉宏)