「イスラムの教えを守ることが誤解解く一歩」、ヤンゴンのイスラム聖職者の思い

モスクに集う子供たち。現在このモスクで学ぶ子供の数は150人である

普段は車でごった返しているヤンゴンの通りがやけに空いている。交通渋滞に巻き込まれることもなく、あっという間に郊外からダウンタウンに到着する光景がみられた。この日は9月11日、ヤンゴンがテロの標的にされるのではないかとの憶測がミャンマー人の間で飛び交い、多くの人が外出を控えたためだ。しかし結果的にヤンゴンでテロの惨状が広がることはなかった。

ヤンゴンが緊張に包まれる今、イスラム教徒たちはどんな思いで日々を過ごしているのだろうか。ヤンゴンのイスラム聖職者であるマウン・マウンさんに話を聞いた。

「善く生きる」ためのモスクでの教育

マウン・マウンさんの役目の一つは、モスクで子供たちにイスラムの教えを伝えることである。モスクには毎週月曜日から金曜日までの週5日、5歳から11歳までの子供たちが集う。彼らは学校から帰るとモスクを訪れ、アラビア語やイスラムの教義について毎回1時間ずつ学ぶ。幼少期にモスクで教育を受けることは、イスラム教徒として生きていくうえでの基礎を形作る重要なステップだという。

子供たちは5歳になるとまずアラビア語を教わる。アラビア語で書かれた文章を読めるようになることは、コーランを正しく理解するために必要であるため、最重要視されているのだ。並行して、イスラム教徒として守るべき戒律などについても教えられる。

道徳を心得たイスラム教徒はテロリストにあらず

イスラム教育に熱を入れるマウン・マウンさんに、近年イスラム教を掲げた人々によるテロ活動が横行し、世界各地で反イスラム感情が高まっていることをどう受け止めているのか尋ねた。これに対し、彼は「イスラム教徒はテロリストではないし、テロリストはイスラム教徒ではない」と静かに語った。「イスラム教徒はモスクでイスラムの教えについてきちんと学んでいる。そもそも宗教は「善行とは何か」を説くものであるため、イスラム教の教えを理解し道徳を心得たイスラム教徒がテロリストになるはずはない。そしてコーランに背いて非道徳的な行いをした者は真のイスラム教徒ではないのだ」マウン・マウンさんは淡々と語るが、その言葉は明確だった。

誤解を解くためにもコーランの教えを意識せよ

そうとはいえ、世界にはイスラム教とテロを結びつけて考える者もいる。この点についてマウン・マウンさんは「その土地の法に従って生活し、身勝手な行いは慎むことだ」と指摘する。地域社会の規律とコーランの教えに従い慎ましやかに信仰生活を送ることが、イスラム教に対する誤解を解く一歩ではないかというのがマウン・マウンさんの考えだ。真のイスラム教を実践すれば、いずれ理解されると信じているという。