トヨタに匹敵!? スーダン人から「三菱車」が愛される理由

三菱自動車・三菱ふそうの販売代理店DALモーターズで働くムツキルさん。左は三菱のピックアップトラック

スーダンの首都ハルツームでよく見かける日本車はトヨタに次いで、三菱自動車・三菱ふそうだ。三菱が善戦する最大の理由は、スーダン最大の民間企業DALグループ傘下のDALモーターズが三菱自動車・三菱ふそうの販売代理店になっているから。DALモーターズのハルツームの代理店で働くムツキルさん(24)は「三菱の車はこの国でとても人気」と話す。

ハルツーム市内最大級の商業施設「アフラモール」で駐車中の車のブランドを調べたところ、断トツで多かったのは韓国の現代自動車で69台。続いてトヨタが26台で日本車の中でトップ。驚くことに日本車で2位に入ったのは三菱(9台)だった。日産とホンダは1台ずつと少なかった。

もっと驚いたのは、ハルツーム最大級のバス乗り場ジャクソンで停車中のマイクロバスを数えたときのことだ。26台中11台が三菱ローザ、7台がメーカー不明、5台がトヨタ、3台が現代自動車と、三菱の人気が圧倒的に高かった。ちなみにフォーカストゥームーブのグローバルオートデータベースをもとにした世界自動車ブランド別ランキングトップ50(2017年1~10月)によると、1位はトヨタ、三菱自動車は27位、三菱ふそうはランク外。ここで言えることは、世界市場では苦戦していても、スーダンでは三菱ブランドが高いことだ。

スーダンではなぜ、三菱の人気が高いのか。第一の理由はスペア部品の入手しやすさにある。スーダンでスペア部品のない車を修理する場合、国外から取り寄せるか、国外に車を運んで修理する必要がある。そうなると時間と費用がかかってしまう。

スペア部品があれば早く安く修理できる。このためスペア部品を入手しやすいかどうかが、車を選ぶ際のひとつの基準となる。ムツキルさんは「中国車はスペア部品がない。ドイツ車は自動車もスペア部品も値段が高すぎる。三菱は部品が手に入るし、車の品質と値段がちょうど良い」と説明する。DALモーターズは三菱のスペア部品をアラブ首長国連邦(UAE)ドバイと日本から調達している。部品の在庫がない場合も1~2週間で取り寄せられるという。

第二の理由は、三菱車の販売代理店であるDALモーターズが、顧客との対話を重視し、それを顧客満足度の向上に生かしている点だ。車を売った後も、車の調子はどうか、スペア部品の値段は高すぎないか、などの顧客の意見を積極的に集める。顧客はフェイスブックページのメッセージ機能や、コールセンターを通じてDALモーターズへ簡単にコンタクトがとれる。

「他の販売店も顧客のことは大切にするのでは?」と尋ねると、ムツキルさんは「うちほど顧客に対するケアをする会社はないよ」と自信に満ちた声で笑う。SNSにもその証拠が表れている。ハルツームで最も広く普及するSNSはフェイスブックだが、三菱の新車情報などを流すDALモーターズのフェイスブックの「いいね!」の数は1万656人、フォロワーは1万750人だ。対照的に、トヨタの販売代理店ゴールデンアローは「いいね!」1598人、フォロワー1604人と圧倒的に少ない。日産の代理店バシールモーターズは「友達」がたったの905人だ(数字はいずれも12月25日時点)。

第三の理由は交通事情だ。ハルツームの主な公共交通機関はバスで、三菱ふそうのマイクロバス「三菱ローザ」が多く走っている。庶民の足といえば、このマイクロバスが一般的。運賃も2~3スーダンポンド(約10~15円)と安い。

悪路の多さも、四輪駆動などオフロードに強い三菱にとって有利な条件となっている。「三菱の車で最も売れているのはピックアップトラックだ」とムツキルさん。首都であっても舗装されていない道は数多い。舗装されていても砂で覆われている。普通の車だと滑ってしまう。

自分の愛車も三菱のピックアップトラックで、運転が好きだというムツキルさん。「スーダンでは車の販売台数は伸びている。だからハルツーム市内は渋滞している。ドライブを楽しむという感じではないよね」と寂しそうな表情を浮かべた。

スーダン・ハルツーム市内にあるDALモーターズの自動車販売店の外観

スーダン・ハルツーム市内にあるDALモーターズの自動車販売店の外観