スリランカ国民の4割以上が糖尿病予備軍、ソフトドリンクの容器に「砂糖含有量のラベル」を貼れば解決できる?

赤や黄色の丸いマークがあるから、ひとめで砂糖の含有量がわかる。スリランカ・カルタラのスーパーマーケットで撮影

スリランカにとって最大の社会問題のひとつは糖尿病だ。スリランカ保健省によると、スリランカ人の40%以上が前糖尿病患者(糖尿病予備軍)か、診断を受けていないが糖尿病にかかっているという。糖尿病を予防したいスリランカ政府は1年前から、すべてのソフトドリンクの容器に砂糖含有量によって色分けされたラベルを貼ることを義務付けた。

■赤・黄・緑で!

スリランカ人は甘いものに目がない。西部州のパナドゥーラのスポーツセンターで陸上コーチをする50代の男性は「紅茶(ミルクティーではなく、ティーバックにお湯を注いだもの)を毎日飲むけれど、砂糖はスプーン3杯たっぷり入れるよ。昔から変わらない」と嬉しそうに話す。スリランカ人の甘いもの好きにはカレーも関係するようで、「辛いカレーを食べた後の甘い紅茶は最高ね」と西部州カルタラ在住の50代の主婦は笑う。スリランカ人にとって甘い紅茶を1日に2〜3杯飲むのは日常だ。

スリランカ人が好んで飲むのは甘い紅茶だけではない。近年はコーラやスプライト、ファンタなども人気。コーラの値段は750ミリリットルのペットボトルで160ルピー(約120円)と、ミネラルウォーター(1リットルで80ルピー=約60円)よりは高いがまずまず手ごろ。カルタラ在住の高校生は「ソフトドリンクが好き。学校の帰りによく買って飲んでいるよ」と話す。

甘いものをとりすぎれば、おのずと血糖値も上がる。また肥満のもとにもなる。このためスリランカではいま、糖尿病の問題が深刻になっている。糖尿病の患者数は経済発展に伴うライフスタイルの変化で増えるといわれるが、国際糖尿病連合(IDF)の「糖尿病アトラス第8版」によると、スリランカの糖尿病患者の数は2017年時点で120万人、2040年には150万人に増える見通しだ。

こうした事態を問題視するスリランカ政府が2016年8月に導入したのが、飲み物に入った砂糖の量が一目でわかるようにラベルを容器に貼る制度だ。対象となるのは、牛乳・乳飲料と100%フルーツジュースを除くソフトドリンクの類。ラベルは3種類あり、砂糖含有量が液体100ミリリットル当たり11グラム以上は「赤」、2〜11グラムは「黄」、2グラム以下は「緑」。フォンタナのグレープジュースは赤色、コーラは黄色、シュウェップスの炭酸水は緑色といった具合だ。

■途上国を蝕む

この制度の効果はまずまず上がっている。パナドゥーラに住む20代の女性教師は「赤ラベルのジュース(フォンタナのグレープジュースなどを指す)は買わなくなったわ。見るからに不健康そうじゃない」と語る。またカルタラにあるスーパーの店員は「ラベルが貼られるようになってから、ソフトドリンクの売り上げは減ったように感じる」と消費の影響を説明する。

途上国に迫りくる糖尿病の脅威。こうした問題に頭を悩ますのはスリランカだけではない。糖尿病アトラス第8版によると、2015年までに20〜79歳の糖尿病患者は世界に4億2500万人。上位10カ国は中国(1億1400万人)を筆頭に、インド(7290万人)、米国(3020万人)、ブラジル(1250万人)、メキシコ(1200万人)、インドネシア(1030万人)、ロシア(846万人)、エジプト(822万人)、ドイツ(748万人)、パキスタン(747万人)と、途上国がずらりと入る。日本は11位の723万人だ。

全世界の糖尿病患者の数は2045年までに6億2900万人に増える、とIDFは予測する。世界人口のおよそ10人に1人が糖尿病になる計算だ。世界の糖尿病関連の医療費は7760億ドル(約88兆円)に上る見込みで、経済的にも大きな負担となりそうだ。糖尿病は21世紀最大の健康危機のひとつ。スリランカのラベリングシステムが糖尿病の深刻化に待ったをかけるのか、注目だ。

紙パックのフルーツジュースには赤や黄色のシールが貼られている(スリランカ・カルタラのスーパーマーケット)

紙パックのフルーツジュースには赤や黄色のシールが貼られている(スリランカ・カルタラのスーパーマーケット)