音楽やダンス、映画で治安を改善させた街がある。南米コロンビア第2の都市メデジンの中心地にほど近いモラビアだ。モラビアにはかつてメデジン最大のごみ山があった。また内戦から逃れてきた人たちが多く集まるスラム街としても知られる。スラム街での生活を強いられ、犯罪に走る若者たちに新たな生きがいを与えようと、モラビア文化センターはカルチャー教室を開催。これが治安回復に一役買った。
モラビア文化センターがオープンしたのは2008年。音楽や武道、絵画など60種類以上のカルチャー教室がある。運営費はメデジン市などが負担するため授業料は無料だ。貧困層が大半を占めるモラビアの住民が優先的に参加できる。
同センターの事務員として働くダニエラ・ジネストローサ・モラレスさんは「ときどき有名なアーティストを呼んで、デモンストレーションしてもらうの。子どもたちはすごく喜ぶ。文化活動に取り組むモチベーションがアップするのよ」と説明する。カルチャー教室に参加した後で本格的に学びたい生徒がいれば、モラビア文化センターは専門学校を紹介する。なかにはブレイクダンサーとしてワールドツアーを行っている修了生もいるという。
カルチャー教室に通うある少年はかつて麻薬の売買に手を染めていた。モラレスさんによると、この少年は「モラビア文化センターがなかったら、麻薬犯罪に巻き込まれて、もう死んでいたかもしれない。ここでは犯罪ではなく、良いことを教えてくれる」と話しているという。まさしく「モラビア文化センターは人生を変える場所」(モラレスさん)だ。
モラビア文化センターの活動が功を奏して、モラビアの不法住居の数は年々減少している。また、コロンビアのニュースサイト「コロンビア・リポーツ」によると、メデジンの殺人発生率は文化センターが設立された2008年は10万人あたり47人だったが、2017年には同22.4人に半減した。
モラビアの住民のほとんどは、1940年代から続くコロンビアの内戦から逃れてきた国内避難民だ。国内避難民の新規登録者数は、ウリベ前大統領が就任した2002年は約23万人だったが、2008年には40万人弱に膨れ上がった。その一部がモラビアに流れ着いた。