「エンジニアの力でベナンを変える」、学習管理システムの開発でベナンの教育現場に革命起こす!

SOARエンジニアリングを興したジェリーズ・アゾンデコンさん(ベナン・コトヌーの社内で撮影)

「エンジニアは人々の生活に役立つサービスを生み出せるんだ」。エンジニアへの熱い思いをこう語るのは、西アフリカ・ベナンでシステムエンジニア会社「SOARエンジニアリング」を興したジェリーズ・アゾンデコンさん(36)だ。2013年の設立から5年目を迎えた今、SOARエンジニアリングは、ベナンの将来を担う若者を育てる目的で、学習管理システムなどを開発中だ。アゾンデコンさんは「今後のベナンを変えていくのはエンジニアだ」と息巻く。

SOARエンジニアリングが現在進行中のプロジェクトの中で、最も力を注ぐのが、ベナンの学校で使用可能な学習管理システムの構築だ。このシステムの一番の特徴は、成績、学費、学習態度、宿題の提出状況など、子どもの教育にかかわることすべてを、親・教師・生徒がいつでも確認できること。「ベナンのすべての学校を巻き込んだプロジェクトにしたい」とアゾンデコンさんは壮大なプロジェクトの概要を語る。

この学習管理システムはまた、「生徒の成績をもとに得意科目や苦手科目を分析し、大学で専攻できる科目の適性を表示する」という機能も備える。システムの開発責任者(ITマネージャー)のドボミゴ・ディオドニさんは「ベナンの若者は、高校を卒業しても、その先で何を学んだらいいのかを決められない人が多い」とベナンの教育現場の現状を訴える。「高校時代、テストの結果を知らされるのは終わってから2~3カ月もあとだった。もっと早く成績を知ることができ、生徒の進路選択にも役立つシステムにしたい」と学習管理システムに込めた願いを語る。

「学習管理システムの構築に向けた道のりは長い」(アゾンデコンさん)。ディオドニさんは「ベナンの学校や省庁に日々足を運び、システム開発に役立つ情報収集をしている。でも思うように開発が進まない」と苦悩を明かす。大変なこともたくさんあるが「エンジニアとしてユニークで革新的なシステムを開発することで、ベナンの若者の助けとなることにやりがいを感じている」とエンジニアの仕事へのやる気をみなぎらせる。

システムの完成予定は2018年末だという。すでにいくつかの学校から「学習管理システムを導入したい」との声も届いている。

SOARエンジニアリングはほかにも、本の貸し借りの効率化を図る図書館システムや、ベナンの文化や歴史についてクイズ形式で楽しく学べる学習ゲームアプリを開発している。図書館で使えるシステムの構築は、「図書館で本の貸し借りがもっとしやすい環境をつくり、ベナンの人たちにたくさんの本を読んでもらいたい」という願いを発端に始まった企画だ。

また、学習ゲームアプリの開発に至った経緯についてアゾンデコンさんは「ベナンでは『ベナンの歴史』を学ぶ機会が小学校に限られている。しかし、国の発展にとって自国の文化や歴史の知識はとても重要だ」と語る。

「ベナンの教育システムは、国の発展を担うには不十分な点が多い。そんなベナンの教育現場をエンジニアの力で改善したい」と力説するアゾンデコンさん。「技術の力はすごい。エンジニアはアフリカが抱える課題に対して解決策を見出すことができる。若者にはぜひ、科学技術の知識を得て国の発展に役立ててほしい」と語る。

SOARエンジニアリングのメインビジネスは、ベナンの携帯電話会社と取引があるHUAWEIやERICSSONなどの通信機器メーカーの下請けとして、モバイルネットワークに接続しやすい環境をつくること。ベナンでは、ネットワークの接続が非常に良くない地域が多いためだ。SOARエンジニアリングの社員は全部で30人。2017年の売り上げは11万2641ドル(約1200万円)。設立当初から利益を出している。