西アフリカはいまもフランスの植民地!? 「CFAの廃止こそが真の独立だ」

西アフリカの共通通貨セーファーフラン(CFA)の札の数々

ベナンを含む西アフリカはいまだにフランスの植民地――。最大の理由は、西アフリカの共通通貨セーファーフラン(CFA)がフランスで発行され、フランス政府がレートを管理しているからだ。ベナンを代表する社会派ミュージシャンのカマル・ラジ氏(29)は「西アフリカはまだ本当の独立を果たしていない。自分たちで管理できる通貨をもつために戦わなければならない」と声を大にする。

CFAの為替レートは1ユーロ=655CFAの固定相場だ。レートを決めるのはフランス政府。この不条理なルールの根拠は、「西アフリカ諸国の独立」を条件として1960年に交わされた条約がこう定めているからだ。ベナンの名門大学であるアボメカラビ大学大学院で国際関係を専攻するエウデュ・クウドロさんは「でもCFAのレートをフランスが決めるということは、ベナンのすべてのモノの値段を決めるようなもの。これは、フランスがいまだにベナンを支配している証拠だ」と不満をぶちまける。

50年以上続く“フランスの植民地状態”だが、カマル氏によると、フランスがCFAを管理しているという事実を、西アフリカで暮らすほとんどの人は最近まで知らなかったという。CFAの実情を西アフリカの人たちに知らしめたのは、フランスとベナンの両国籍をもつ汎アフリカ主義者の活動家ステリオ・カポ・チチ(通称:ケミ・セバ)氏だ。同氏は「CFAの廃止」を求め、同じ西アフリカのセネガル国内で、CFAの札を燃やす運動を2017年に展開。この運動は瞬く間に西アフリカ全土に広がった。

ケミ・セバ氏の考えに呼応して、ベナン4都市でのデモ行進を呼びかけたのはカマル氏だ。「フランス支配の名残であるCFAをなくそう」と訴えた。ケミ・セバ、カマル両氏の運動で、西アフリカの人たちは、自分たちが使う通貨(CFA)を、誰が管理していて、どこから来るのか、を知ることとなった。ベナンの若者たちは、CFAがベナン経済にどんな悪影響を及ぼしているのか、といった議論をするようになった。

カマル氏は言う。「CFAは、ベナンの経済と産業を破壊している。(CFAの為替レートをフランスに有利にすることで)せっけんから鶏肉まで、多くのフランス製品が安い価格でベナンに入ってくる。ベナンの製品は価格競争で勝てない。輸入に依存する状態が続き、その結果、ベナン経済は自立できない」

こうした事態をより深刻にさせているのは、西アフリカの政治家がフランスに逆らいたくてもそれは不可能に近いという事実だ。「西アフリカ諸国の大統領はCFAを廃止したくても、それを言えばフランスに暗殺されてしまう。政治家はフランスの言いなりになるしかない。西アフリカは“経済的な奴隷状態”だ。ベナンを含む西アフリカはまだ独立を果たしていない」(カマル氏)

CFAを通じたフランスによる西アフリカの経済支配‥‥。意識が高い数人のアフリカ人が反対するだけでは現状を変えられないのは火を見るよりも明らか。西アフリカの多くの人たちが、CFAをフランスが発行し、レートを管理し、それによって経済が牛耳られていることを理解することが“脱・植民地支配”への第一歩となる。そのためにケミ・セバ氏やカマル氏は運動している。

「CFAの廃止こそ、西アフリカの真の独立だ。中央銀行をもって、俺たちアフリカ人が管理する通貨を作るべきだ」。カマル氏はこう強く訴える。

カマル・ラジ氏

カマル・ラジ氏