日本版フェイスブックはなぜ誕生しないのか? インド人エンジニアが考える日本のITガラパゴス脱却法

日本企業をメインの顧客とするインドのシステム開発会社SHIMBI LABSのデシュムク シッダールタ最高経営責任者(CEO)。フリーランスのエンジニアとして働いていた経歴ももつ(インド・プネーで撮影)

「日本のエンジニアはもっと海外に出るべきだ」。日本企業がもつ独自のIT文化(ITガラパゴス)から脱却する方法について、こう語るのはインド・プネーに拠点を置くIT企業SHIMBI LABSのデシュムク・シッダールタ最高経営責任者(CEO)。ITエンジニアとして日本企業のシステム開発に携わってきたデシュムクさんは、日本のITは世界標準から大きくかけ離れ、このままでは日本のIT企業の生き残りは厳しいと感じているという。

日本からどうしてグーグルやフェイスブックといったメガIT企業は誕生しないのか。その理由についてデシュムクさんは「世界のIT企業はグローバル戦略をとったうえでローカライズ化を進めていく。これに対して日本のIT企業は日本市場をまず確保したがる」と分析する。流行の移り変わりが速いIT市場では他の業界に比べて、生き残りには海外進出が重要だ。

「中小企業を含め、もっと多くの日本企業が世界を目指してもいいはず。フェイスブックは世界中に普及した。なのにミクシーは日本国内にとどまってしまった」。デシュムクさんはこうため息をもらす。

日本企業がグローバル進出する際に直面するのが「言語の壁」だ。だがIT産業の分野では「言語の壁」以上に問題になるのが「IT文化の違い」だ。

その一つが、システムを開発する際に重要視されるポイントの違い。米国をはじめとする世界の企業が重視するのは、システムが正しく動くかどうか、セキュリティが強固かどうか、ページのアクセススピードが早いかどうか、という点だ。「これらをクリアしていれば、コーディングといった開発過程に口を挟まれることは少ない」(デシュムクさん)

海外の企業の間では、より良いシステムを作るために新しい技術を利用することは厭わない。だが日本のIT企業はシステムが正しく稼働するかという点以上に「開発過程」に重点が置かれるのだという。

「システムの設計書である仕様書にしたがって、日程やコーディングまで管理する。システムをより良くするためであっても、仕様書から外れたことをするのは認められない。新しい技術の利用も消極的だ」(デシュムクさん)

日本のビジネスが世界に通用しないのかというと、そうではないとデシュムクさんは語る。日本の製造業は世界でも強い。とりわけ日本車はインド各地で走っている。

日本のIT企業も世界で活躍するチャンスはある、というのがデシュムクさんの持論だ。そのためには、日本はITガラパゴスを脱却し、世界のITの流れについていくことは必要不可欠。インド人エンジニアが世界中を行き来しているように、日本人エンジニアがもっと海外に出て、世界標準のIT文化を日本に持ち帰ることがITガラパゴスを脱却する第一歩になるといえそうだ。