真っ赤なサリーにピンクのスニーカー! インドのスラムで働く新米コーディネーターの教育普及大作戦

MASHALのオフィスがある建物の前で微笑むビディヤさん(インド・プネーで撮影)

「仕事終わりにはなるべくスラムまで子どもたちに会いに行って、様子を確認するの」。こう話すのは、インド・プネー 市にあるスラムの住民の生活をサポートするNGO「MASHAL」(マシャール)で働く教育コーディネーターのビディヤ・ヒラヴェさん(24歳)。スラムでの教育を普及させるために試行錯誤する日々を送る。彼女の仕事はスラムの子どもたちを公立の学校に通わせることだ。

プネーのスラムで暮らす子どもの多くは学校に通えないのが実情。その理由は、親の収入だけで生活するのが難しいからだ。「幼い子は4歳から物ごいをさせられる。親に、ボロボロの服を着せられ、お金を催促する言葉だけを復唱するよう言われる」(ビディヤさん)

さらに深刻なのは、親が教育の重要性を理解していないことだ。ビディヤさんは「子どもたちの未来を変えられるのは教育だけだ。なのに、親たちが十分な教育を受けてこなかったから、その重要性をわかっていない」と話す。2017年12月時点で、彼女が担当する3カ所のスラムに住む6〜18歳の子ども約600人のうち半数以上の340人が学校に通っていなかった。

MASHALのメインの活動のひとつが、学校に通えない子どもたちを対象とする「サポートクラス」の運営だ。ビディヤさんは仕事が終わったあと2週間に1度、学習に必要な教科書やノート、ペンなどをサポートクラスに運ぶ。ところが子どもたちの多くはサポートクラスに一度も来ない。ビディヤさんは「私は貧困に喘ぐ子どものために勉強道具を運ぶ。なのに子供たちは仕事に行ってしまう」と悲しむ。

しかしビディヤさんは何度も立ち上がった。根気強く、教育を受けていない親でも分かる資料を持って、400軒以上の家庭を訪問した。「教育は貧困から脱出する可能性を秘める」と何度も説明したが、時には「しつこい」「あんたと話している時間があるなら仕事に行く」と門前払いにあったことも。

しかしスラムの親もついにビディヤさんの熱意に負けた。子どもたちを学校に通わせる家庭が少しずつ増えてきた。するとスラムの親から「子どもが計算をできるようになった」「本を熱心に読むようになった」など、感謝の言葉を聞くようになったという。

今でも彼女の活動スタイルは変わっていない。定期的に3つのスラムを訪れ、学校に来られない子どもたちの親に「子どもを学校に通わせてほしい」と説得を試みたり、最近では、通いたくても通えない子どものために教師を派遣するプランを考えたりしている。

彼女が描く未来は、すべての子どもが学校に通うこと。ビディヤさんは「すべての子どもたちが学校に通うまで、私は何度でもスラムに通うわ。みんなで一緒に貧困から抜け出すのよ」と力強く述べた。