「LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー=性的少数者)は子どもを産まないから生産性がない。税金を使うに値しない」の発言で炎上した自民党の杉田水脈議員。インドでも「子を産まない女性には価値がない」「女子は将来お金を稼がず、“生産性”がないから、教育への投資をしない」という古い価値観が残る。男女格差の度合いを示す「ジェンダーギャップ指数2017」(世界経済フォーラム)によると、インドの順位は144カ国中108位と、日本の114位より高い。しかし内実は、国会などの議席を女性に優先的に与えるクオーター制が女性の政治参加の得点を吊り上げただけで、女性の地位は依然として低いままだ。
女子に高等教育を与えよ
IT先進国となったインド。とはいえ伝統的社会では女性の地位は低い。識字率は男性の79%に対して女性は59%にとどまる。インド西部の都市プネーにあるプネー大学に通う大学院生4人に、女性の地位が低い理由を尋ねたところ、インドの慣習に「女性蔑視の考え」が潜むことが分かった。
大学院で数学を専攻するナムラタさん(21歳女性)とシャラバニさん(22歳女性)は「インドで女性の地位が低いのは、男性が女性を尊敬する教育をしてこなかったから」と口をそろえる。「女性が勉強をして仕事をすることで女性の地位が高くなると思う」と話すナムラタさんの夢は、エンジニアになってバリバリ働くことだ。
英語を専攻するジュボンさん(21歳男性)は「都市では女子も大学に行きやすい。だけど田舎ではまだ難しい。田舎は保守的。娘を外の世界へ出したがらない」と、都市と田舎では価値観に隔たりがあると話す。
男女比率は10:9
男1000人に対して女900人――。これは、2017年にインドで生まれた男女の比率だ(ジェンダーギャップ指数2017)。自然の出産率は、男1000人に対して女950人が平均なので、インドでは1000人当たり50人の女児が中絶などで生まれなかったと推測できる。インド憲法は中絶を禁止するが、なぜ女児は堕胎されるのか。
その理由についてサンスクリット語を学ぶ学生、スレシさん(23歳男性)はこう解説する。「女の子はいずれお嫁に行く。インドでは女児は生まれたときから“他の家の子”との感覚がある。男は金を稼ぐから、家のためになる。でも女は稼がないから生産性がない。だから教育投資もしない」
インド人の一般的な家庭からすれば、娘は早く嫁に出したい。ジュボンさんは「貧しい家の女の子が12~14歳で結婚さられるのは、女性側の家が男性側の家族に払うダウリー(結婚持参金)が安く済むから。女児が中絶される理由の6割は貧困だと思う」と話す。
児童婚とダウリーは50年以上前に法律で禁じられたものの、今も残る因習だ。都市では児童婚は廃れ、ダウリーは結婚時に贈られる車や家電に置き換わりつつある。一方、田舎では依然としてダウリーと児童婚は強く残る。貧しい家庭で女児が“負債”として重くのしかかることは、今も変わらない。
「夫の家族とうまくやることも必要」と女性の声を代弁するシャラバニさん。「女児を中絶するのは悪いこと。でも男の孫がほしい義理の両親からのプレッシャーが執拗だと、家族とうまくやるために中絶も仕方ない」と漏らす。