JVCがカンボジアの農村で食品加工研修、「今や買うのは魚だけ!」と農家の支出削減に成功

JVCがカンボジア・シェムリアップ州の農村で提供する食品加工研修で、 熱心に学ぶ女性たち(提供:JVC)

国際協力NGOの日本国際ボランティアセンター(JVC)がカンボジア・シェムリアップ州の農村で女性を対象に実施する食品加工研修が評判を呼んでいる。2017年には同州チークラエン郡の2つの村でライムの酢漬けなどの作り方を教えたところ、実践する人が参加者の7割を突破した。JVCカンボジア駐在員の大村真理子さんは「自分たちで作った加工食品を販売し、2年で500ドル(約5万6500円)の売り上げを出した女性グループもある」と語る。

JVCが2013年からパイロット的に始めたこの研修をチークラエン郡の6つの村に広げたのは2015年から。研修で学ぶ加工品の種類は20以上だ。なかでも人気は、村で手に入りやすいライムや大根の漬物、大豆の発酵食品などだ。

大村さんによると、食品加工の保存が効くというメリットを生かし、仕事の効率化につながる例もある。森に近い村に住む農家は、建材の切り出しや木炭の材料を取りに森へ数日間入る。かつては食料が尽きる前に村に戻ってきたが、大根の塩漬けなど日持ちする加工食品を持っていくことで森での滞在日数が伸びたという。

ライムの酢漬け、大豆の発酵食品、アヒルの卵の酢漬けなどを作って売り、収益を得る女性グループも出てきた。JVCの研修を受けた、チークラエン郡のドンソック村のコッサンさんは8~15人の女性チームを立ち上げ、メンバーで作った加工品を1個3ドル(約340円)ほどで家庭での消費用として販売していた。

2013~15年の売り上げは記録が残っているだけで約500ドル(約5万6500円)。経費などを引いた325ドル(約3万6700円)をメンバー同士で分けあった。現在は互いの時間をあわせることが難しくなり、グループとしての活動は休止中。だがメンバー数人で時折、加工品を一緒に作る活動は続いている。

JVCはまた、野菜の栽培を促すための研修も手がけてきた。とくに促進するのは、葉っぱの栄養価が高く、比較的簡単に栽培できる食用樹であるチャヤ(ビタミンAやC、鉄分、リンが豊富)、モリンガ(ビタミンやミネラル、アミノ酸がバランスよく摂取できる、国連お墨付きのスーパーフード)、アマメシバ(ビタミン、鉄分、カルシウムが豊富)だ。研修に参加した7割の農家がすでに自宅での栽培を始めている。「今では外で買うのは魚ぐらい」になったという農家も少なくない。野菜や加工品の買い足しに使っていた月2.5~5ドル(約280円~560円)の家計支出の削減につながっているようだ。

カンボジアの農村部では1世帯の月収が約100ドル(約1万1300円)あれば良いほうと生活環境は厳しい。若者がタイやプノンペンへ出稼ぎに行って、家族へ仕送りする状況は変わらない。大村さんは「将来は、農家が出稼ぎに行かずに、生業の農業だけで暮らせるようになれば良いと思う。農家が育てる野菜や食品加工の技術が役立つような仕事を今後も生んでいきたい」と話す。

そのアイデアのひとつが、村から車で1時間ほどの街シェムリアップにあるホテルのレストランに、JVCが運営する試験農場で栽培した野菜を売るプロジェクトがある。まだ検討段階だが、「まずは試験農場で野菜栽培のモデルケースを作り、将来的に地元の農家につなげられたら」と大村さんは青写真を描く。

加工食品を販売していた女性グループの一部のメンバー。一番右の女性がコッサンさん。会計を担当していた。今は日本国際ボランティアセンターがさまざまな村で実施する食品加工研修の講師も務める(提供:日本国際ボランティアセンター)

加工食品を販売していた女性グループの一部のメンバー。一番右の女性がコッサンさん。会計を担当していた。今はJVCがさまざまな村で実施する食品加工研修の講師も務める(提供:JVC)