1月7日はコプト教徒のクリスマス! カイロで見つけた店員の大半が障がい者のKFC

店舗の入り口には「コミュニティ・ケア・レストラン」の表記。客と店員の会話もどこか微笑ましい

エジプトでは国民の約1割がコプト教徒(キリスト教の一派)といわれています。そのコプト教徒のクリスマスが1月7日です。イスラム国家のイメージが強いエジプトですが、1月7日は国民の祝日にもなっています。日本ではクリスマスの日にケンタッキーフライドチキン(KFC)がよく売れるようですが、このコラムでは、エジプトの“知られざるKFC”について紹介します。

エジプトの首都カイロにあるドッキ地区にはユニークなKFCがあります。どうユニークかというと、店員のほとんどが聴覚障がい者なのです。

障害保健福祉研究情報システム(DINF)のデータによると、エジプトでは人口の約4%が障がい者とされています。日本の0.4%、途上国全般の1.5~2%に比べると、その比率はとても高いです。それゆえに十分な教育を受けられなかったり、職が見つからない障がい者が多く存在すると聞きます。

私がドッキ地区のKFCを見つけたのは2006年秋のことでした。この店の近くに当時住んでいた私はいつも前を通ってカイロ大学へ通っていました。初めは普通のKFCだと思っていたのですが、店の前で手話で会話する店員がいつもいることに気づいたのです。

私は2011年、今度は青年海外協力隊として再びエジプトへ行きました。この店を再度訪れると、店内の壁には手話が描かれていました。メニュー表を使って、店員と客がスムーズに会話できるようになっています。そしてなによりも働いている人たちの笑顔がとても素敵でした。

商品を購入した後、私はしばらく他の客や店員の様子を見ていました。客の態度もとても好意的に感じます。店員も言葉による会話はできませんが、ボディーランゲージを使っておもてなしをしてくれます。「おいしい?」「何か必要なものはない?」などと気遣ってくれるのです。店員が言葉を発せないことに怒る客はいません。

障がい者を積極的に受け入れる職場にめぐり合うことはとても難しいと思います。先進国とされる日本ですら、十分ではないと聞きます。けれども障がい者と一緒に働く職場というのは、周りの人を、とても優しい気持ちにさせるものだな、と私はこのKFCを通して教えられました。

コプト教徒のクリスマスの時期になると、私は毎年このKFCを思い出します。そして優しい気持ちになっています。(辻野恭子)