世界銀行は、1月27日に発表した報告書「サブサハラ・アフリカにおける若者の雇用」で、生産性と賃金の高い雇用を若者に提供することが、サブサハラ(サハラ砂漠以南)アフリカの経済成長と貧困削減に不可欠だ、と指摘した。
人口の半分以上を25歳未満の若者が占めるサブサハラ。今後10年にわたって毎年1100万人の若者が労働市場へ新たに加わると予測されるが、生産性や賃金の高い職を若者に十分に提供できていないという問題がある。サブサハラの国内総生産(GDP)をみても、2000~2012年に年平均4.5%の成長を達成したにもかかわらず、そこに暮らす人々の65%は「自国の経済状態は改善していない」と感じていることが最近の調査でも明らかになった。
世銀報告書は、このギャップの要因を、サブサハラの経済成長の大部分が石油や天然ガスといった資源産業に依存しているためと指摘する。なぜなら資源産業は、農業セクターなどの労働集約型と比べて雇用を創出せず、結果として経済成長の恩恵を国民が享受しにくいからだ。
また、サブサハラ低所得諸国では社会的セーフティネットが不十分だが、この現実が生産性・賃金の低い職場で労働者が働かざるを得ない状況を生み出している。
報告書によると、サブサハラでは今後も、労働者の約80%が農業セクターや家内企業といった賃金の低い小規模産業で就労するとみられる。多くの人々の生活水準を改善し、貧困を削減するためには、小規模産業の生産性をいかに高められるかが重要だ、と訴える。
小規模産業の生産性向上について、報告書の共同執筆者のひとりデオン・フィルマー氏は「政府によるビジネス環境の整備」と「若者の人的資本の蓄積」の2つの対策が大きな効果をもたらす、と世銀のプレスリリースで述べている。「政府によるビジネス環境整備」の対策はインフラや投資環境の整備を含む。たとえばエチオピアの軽工業部門では、現在の貿易障壁や金融規制を排除することで、雇用を18倍に増やすことが可能だという。
また「若者の人的資本の蓄積」対策は、教育や職業訓練の提供などを指す。特に成長する産業を対象にした、必要な技術を得るための職業訓練が一般教育の補完として提供されることが望まれる。
報告書はさらに、「若者の人的資本の蓄積」への支援対策として、北ウガンダ社会活動基金の活動を挙げた。この基金から、職業訓練や事業立ち上げのための費用をまかなうために融資を受けた若者の所得が41%向上したことを紹介している。また、リベリアで、若い女性が専門技術、マナー、ビジネススキルという複数の技術を習得した結果、毎月の給料が115%増加した例を挙げ、幅広い技術提供の重要性を評価している。
報告書は、若者の雇用問題について優先的に行う事項を、セクター別に以下ののようにまとめている。
(鈴木瑞洋)