世界銀行は2月20日、報告書「職場におけるジェンダーの平等」を発表し、働く女性への平等な機会提供が貧困削減に貢献すると指摘した。この報告書は、雇用問題をテーマとする「世界開発報告2013」とともにまとめられたもので、具体的には、ジェンダーに基づく偏見の早期解消、女性の金融サービスへのアクセスの拡大、法定定年年齢の引き上げなどを提案している。
報告書によると、世界全体の女性の就労率は過去20年で57%から55%へと減少、その改善状況は停滞してきた。また男女格差も依然顕著で、女性の正規雇用率は男性の約半分(ギャロップ2012年調査)で、女性の平均賃金は男性と比べて10~30%低い(国際労働機関=ILO2008年統計)。ジム・ヨン・キム世銀グループ総裁も、報告書の発表に際して「多くの働く女性が、基本的な自由や機会を制限され、不平等な扱いを受けている」と強調している。
これを背景に、報告書は、女性の職場環境を整えることは貧困の削減に大きな効果をもつ、と訴える。一例として、ラテンアメリカ・カリブ海地域で1995年から2012年までに女性の就労率が43%から58%へ上昇したことが、同地域の貧困削減につながった、と指摘。もし女性就労率の改善がなければ、2010年の同地域の極度貧困率は、実際より30%高かっただろうと試算している。
また、中国やインドなどの新興国でも、雇用面のジェンダー格差を縮小することで、国民1人当たり所得を2020年までに14%押し上げることが可能だというデータもある。さらに報告書は、途上国のみならず、先進国の職場のジェンダー格差解消による経済効果にも言及。特に日本を例に挙げ、女性の雇用を男性と同程度まで引き上げることで、日本の国内総生産(GDP)は9%上昇する、としている。
ジェンダー格差の解消のためには、広く組織的な政策的措置が不可欠だ。具体的には、ジェンダー平等を雇用戦略や成長戦略へ組み込むこと、法制度の改革、民間セクター関与の推進などを報告書は挙げている。特に、民間セクターは労働環境や政策の整備などの取り組みを主導する役割を果たすと考えられ、国レベルでのジェンダー格差の状況を分析することで民間セクターを支援することが重要だと指摘する。
また、ジェンダーに基づく偏見は女性の幼少期から始まっていることに鑑み、幼少期から青年期、生産年齢といったそれぞれの年齢群にあわせた政策も提言している。
(鈴木瑞洋)