世界で最も権威ある音楽賞のひとつである「グラミー賞」をこれまでに9度受賞している米国の人気R&B歌手ジョン・レジェンド。2014年のワールドツアー「オール・オブ・ミー」で予定されているジンバブエ公演について、“社会格差”を引き合いに出した論争が巻き起こっている。
レジェンドのワールドツアーは当初、アフリカ南部では南アフリカ共和国のみの公演予定だったが、ジンバブエのイベント企画会社デイヴィス・イベンツが、同国での公演を実現させた。公演は11月に首都ハラレで開催される。
レジェンドの公演を前に、地元メディアを騒がせているのはそのチケットの価格だ。デイヴィス・イベンツによると、チケットは30ドル(約3000円)から150ドル(約1万5000円)までの価格幅で販売されているが、30ドルなどの安価なチケットは即完売。ホームページ上の予約画面では、高額なチケットのみが予約可能となっている。
この価格設定では、一般的なジンバブエ人の収入ではなかなか手が届かないだけでなく、チケットの購入者の多くは、社会的に上層で、経済的にも豊かなヨーロッパなどからの移住者だとの一部報道がある。このため、地元ファンから不満の声が上がっている。
海外の大物アーティストがジンバブエで公演を行うことには、政治的な批判もある。
14年1月、同じデイヴィス・イベンツ運営の下で、カナダの世界的ロック歌手ブライアン・アダムスがジンバブエ公演を行った。その際、国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」などは、世界的アーティストによるコンサートの開催が、ジンバブエの政治、経済は安定しているというメッセージを発信してしまい、30年以上続くロバート・ムガベ大統領の独裁体制に正当性を与えることにつながるとして強く非難した。
こうした論争が起きていることについて、デイヴィス・イベンツは「安いチケットが売り切れ、高いチケットが残るのは、単に需要と供給の問題だ」とコメントしている。(西森佳奈)