インド・コルカタ在住のロハン・バッタチャリアさん(20)は、日本で英語を教えたいという夢をもつ。難関コルカタ大学英文学科と日本語学校に同時に通う努力家。連載「今のインドに生きる若者たち」の第2弾では、周囲の反対にもめげずに夢に向かって邁進する日本好きのインド人学生を取り上げる。
■日本は幼いころからの憧れ
バッタチャリアさんが英語と日本語を学ぶ理由は、日本の高校で英語教師になりたいという夢があるからだ。日本は幼いころからの憧れ。インターネットを通して「ジョジョの奇妙な冒険」や「ワンピース」の大ファンになり、日本文化に興味をもった。日本語学校に入学できるのは18歳からなので、大学入学と同時にバッタチャリアさんは日本語学校に通い始めた。
「高校の時の英語の先生は僕の恩師。大好きな日本で、恩師のような英語の先生になりたいと考えるようになった」とバッタチャリアさんは表情を輝かせる。
バッタチャリアさんの家庭はとても教育熱心だ。その熱心さは、バッタチャリアさんが13歳の時、高いレベルの教育を受けるためにインド北部のウッタラカーンド州デラドゥンからコルカタに家族そろって移住してきたほどだ。
だが大学で文系に進むことは母親に反対された。「インドでは医者やエンジニアになるのがエリートコース。文系は見下される。あきらめずに説得し続けた結果、今では母親も応援してくれるようになったよ」(バッタチャリアさん)
反対したのは母親だけではなかった。「日本語学校の先生には、日本で英語教師になれるのはアメリカ人やオーストラリア人。インド人にはチャンスがほとんどないと言われた。とても落ち込んだよ」
日本語学校の先生はいまだに、日本で英語教師になることに反対する。だが将来の夢は変えられないとバッタチャリアさん。「どれだけ反対されてもやっぱり諦められない。インドで働くことも選択肢にはあるけれど、長年の夢だから挑戦してみたい」と闘志を燃やす。
■唯一の不安は留保制度
英語をより専門的に学びたいバッタチャリアさんは、コルカタ大学を卒業した後、名門ジャダプール大学の修士課程で研究することを目指す。
だが心配の種は「留保制度」だ。留保制度とは、SC・ST(ダリットなど最も低いカーストのグループ)やOBC(SC・STに次ぐ低いカーストのグループ)の人たちに対する差別を是正するアファーマティブアクションの一種。インドの大学・大学院入試では、上位カースト(ジェネラルと呼ぶ)とSC・STの間では、足切りラインに正答率ベースで20%以上の差があることもざらだという。
ジェネラルのバッタチャリアさんにとって、大学入試は熾烈な争いだ。「独立前は確かにカースト差別があった。でも今は少ない。家庭の経済状況に応じた救済措置なら納得できるけれど、カーストを基準にするのはナンセンスだ」と憤慨する。
ちなみに留保制度では、カーストが低ければ低いほど、大学入試だけでなく、奨学金の申請、政府系企業への就職、国会下院・州議会の選挙などで「枠」があるため、ジェネラルに比べて有利になる。
“逆差別”の心配を抱えながら勉強に励むバッタチャリアさん。「僕の名前には高みを目指して上っていくという願いが込められている。名前の通り成長し続けて、目標を達成したい」