小学校の授業の合間に軽食(レファクシオン)を配る中米グアテマラで、児童の栄養改善を目的にメニューを変えようとの動きが広がりつつある。グアテマラの教育省は2017年、小学校向けの軽食予算を増やし、「飲み物+固形食品+補食」を提供すべきと定めたガイドラインを作った。ところが学校現場はいまも、スナック菓子などのジャンクフードを出しているのが実情だ。
グアテマラ北西部のウスパンタン市の小学校。朝10時ごろになると、皿とコップを持った子どもたちが教室から勢いよく飛び出していく。学校が支給する軽食を受け取るためだ。「お腹が減った」「きょうのメニューはなんだろう」と口々に言いながら。
この小学校が始まるのは朝7時半と早い。昼の12時過ぎに終わるので、10時の軽食は日本でいえば給食のようなもの。ちなみにグアテマラでは昼食は家で家族と一緒にとるため、昼の給食はない。
この日のメニューはジャムパンとアトル(コメやトウモロコシの粉を溶かした飲み物)。炭水化物に偏りがちのメニューは、子どもの肥満や低身長を引き起こすといわれる。理想をいえば、補食としてバナナやリンゴなどの果物が欲しいところだ。
この国では軽食をとるのは習慣。といっても栄養バランスはテキトーだ。学校の外では、どこでも手軽に買える炭酸飲料やスナック菓子で済ませることがほとんど。こうした“習慣”を憂慮して、ウスパンタン市の食の安全保障委員会のメンバーのひとりは「学校で出す軽食を通じて、正しい食生活を子どもたちに身につけさせたい」と話す。
食の安全保障委員会によると、児童1人当たりの軽食予算は4ケツァル(約60円)。2年前の1.58ケツァル(約24円)から2.5倍に増えた。2020年には5ケツァル(約75円)にさらにアップさせる方針。ここだけ聞くと、軽食のメニューはもっと充実してもいいはずだ。
メニューが変わらない最大の理由は、教育省がせっかく作ったガイドブックを学校側が使っていないからだ。ガイドブックは、予算内で準備できる理想的な10の軽食メニューとして「野菜とひき肉のサンドイッチ+牛乳のアトル+果物」「トルティーヤ+アトル+野菜スープ」などを紹介している。いずれもシンプルな料理なのに、作り方まで親切に載せる徹底ぶりだ。
ところが学校現場では、教師がメニューを決め、児童の母がそれを作るというのが通例。このやり方がなかなか変わらない。子どもたちの栄養状態を良くしようにも、この通例が大きな壁として立ちはだかる。
そこでウスパンタン市と教育事務所は10月、ガイドラインを使った軽食メニューを紹介する祭りを開いた。この祭りに参加したのは市内の小学校10校。「パパイヤのジュース+シエテカミサ(トウモロコシの粉の生地に黒豆のペーストを練りこみ蒸したもの)+バナナ」「アトル+タマリート(トウモロコシの粉の生地を蒸したもの)+リンゴ」など、地域で採れる食材を使ったメニューをそれぞれが作り、来場者に振る舞った。
予算をせっかく増やしたのだから、栄養たっぷりの軽食を子どもたちに届けたい。こう願うウスパンタン市の教育事務所は、さらに6種類の軽食メニューを考案した。年明けから各小学校に紹介していく予定だ。