インドネシアのスタートアップが1億6000万円の寄付集める! 新型コロナの防護具を1000の病院に配布

新型コロナウイルスの感染拡大で疲弊するインドネシアの医療現場

新型コロナウイルスの感染が広がりつつあるインドネシアで、首都ジャカルタに本社を置くITスタートアップ会社「WeCare.id」が、同国全土のおよそ1000の病院にマスクや手袋などの個人防護具(PPE)を届けた。貧しい患者のための医療費をウェブサイトで募る事業を営む同社は、本業のネットワークを生かし、PPEの購入額として、インドフードなど地元の大企業から総額220億ルピア(約1億6000万円)の寄付金を集めた。

インドネシアの新型コロナの感染者は5月18日時点で1万7514人、死者は1148人だ。死亡率は6.5%で、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国のなかではフィリピン(6.6%)に次いで高い。ちなみに日本は感染者1万6305人、死者749人、死亡率4.6%。

インドネシアでは少なくとも20人の医療従事者が院内感染で命を落とした。その理由としてインドネシア医師協会(IDI)のダエン・モハマド・ファキ理事が挙げるのは「PPEの不足」だ。PPEとは、手袋、マスク、キャップ、エプロン、シューカバー、フェイスシールド、ゴーグルなどを指す。

PPEは、安全上の理由から一度使うと廃棄しなければならない。「PPEが足りないインドネシアの医療現場では、PPEの代わりにレインコートを羽織ったり、ビニールのごみ袋を被ったりしている。ぎりぎりの状態」(WeCare.idのセプティアントCEO)

WeCare.idが提携先の病院から「PPE不足が深刻だ」との連絡を初めて受けたのは3月18日。その後、他の病院へもネット上で要望を募ったところ、およそ2000の病院から「必要だ」との声が寄せられたという。「『助けてくれ』と病院から連絡が入ったときは頼られていると感じて、すごく嬉しかった」とセプティアント氏は話す。

これと並行して同社は、PPEを購入するための寄付も呼びかけた。すると1カ月で、インドネシアのECサイト最大手のトコペディア、同国食品大手のインドフード、同国大手化粧品メーカーのパラゴンテクノロジー、ボディショップ、個人からは3540人から寄付が集まった。総額1億6000万円の内訳は企業7割、個人3割だ。

12人の社員が手分けして、PPEの調達先や物流会社も探した。病院の要請を受けてから数日後から順次、PPEを発送。物流会社の手配が間に合わないところは社員が直接持っていった。

WeCare.idは今後、新型コロナの非常事態宣言を受け、収入が途絶えた「路上の物売りたち」を対象にコメを届ける活動も立ち上げる。この資金も寄付でまかなう予定だ。

セプティアント氏は「みんなが1日でも早く日常生活に戻れるようにしたい。いまは自分たちができることを全力でやるまでだ」と話す。

ジャティネガラ・ヘルスセンターにPPEを寄付したときのようす。フェイスシールド3個、N95マスクボックス5個、カバーオール7個などを届けた

ジャティネガラ・ヘルスセンターにPPEを寄付したときのようす。フェイスシールド3個、N95マスクボックス5個、カバーオール7個などを届けた