- 2022/09/15
「汗とたたかうサウナ教室」夏休み編
夏の暑い8月、日本の学校は、長い夏休みである。
子ども達は家族旅行や海水浴などを楽しんでいるであろう。
ところが在日ブラジル人学校「サンタナ学園」の夏休みは短く、親の勤め先の企業や工場が休むほんの数日だけなのだ。
猛暑のなか、子ども達は学校に通う。いや私も同じだ。
私が「サンタナ学園」に通うことになったのは、地域の学校に通えない在日ブラジル人の子どもがたくさんいると知ったから。
彼らは日本語を全く話せない。そのことが私にはものすごくショックだった。
私がこの「サンタナ学園」に通って今年で約3年になる。
今年の夏は特に暑い。
さてここから闘いが始まるのである。エアコンの効いた車を運転して2時間、滋賀県愛莊町にあるサンタナ学園に到着。そこから歩いて8歳、9歳、10歳の子ども達のいるサウナのように暑い教室に向かう。そこは閑静な住宅街の一角にあり青と白のペンキが塗られたプレハブ校舎だ。
私が目指すは白い色のプレハブ校舎の 2階。その階段を上がろうとすると、子ども達が2階の窓から私を見つける。
すると「ジャポネスせんせいだ!」と思いっきりの笑顔で手を振ってくれる。
その笑顔に導かれ私は、子どもたちのいる教室へ上って行く。ちょうど午後2時である。
普段はブラジル人の先生がポルトガル語で授業をしているが、入れ替わりで私が日本語の授業をするのだ。
すでに私の額には汗が、いや全身から汗が流れていた。教室の温度は40度あるだろうか。まるでサウナだ。汗との闘いが始まった。
教室のドアを開けると子ども達はざわつき始める。
私は「こんにちは!」「元気ですか!」と言いながら目に入った汗を拭く。
汗がまた目にしみて痛いこと。
子ども達大きな声で「はーい、げんきです」と答える。
私は眼鏡をはずして目を拭く。
子ども達は「せんせい ショウランド」と笑う。「先生、泣いている」という意味だ。彼らからみるとそう見えるのだろう。私は汗を止めなければ眼鏡すらかけられない。そこで3つの作戦を実行してみた。
作戦1:クーラーボックスから保冷剤を出してタオルに包んで首に巻く。
作戦2:水に濡らすと冷たくなるタオルを出し、顔を拭く。
作戦3: マスクもまた私にとって大敵だ。汗で濡れたのであれば いっそうのこと水で濡らす。
なんとか汗が止まった。
だが5分ももたず、また汗が噴き出てくる。プリントや本の上に落ちる汗。
「なんとか止めてくれ! 」と心の中で叫んでみる。
私の様子を見かねたのか、別の教室にいた担任の先生がなにやら霧吹きのような物を扇風機に向かって吹きつけた。しかしそれは失敗であった。なぜならば霧吹きの水は教室に置いたままで温水だったのだ。
子どもたちは、慣れているのか汗をかかないのか、汗を拭く様子もない。だから私が汗と戦っている姿が滑稽に見えているのかもしれない。
解決策もないまま再び闘いに挑戦するぞ!
汗との闘うサウナ教室は9月の中頃には終わるのであろう。
(サポーター/稲垣 智都子)
*ganasサポーターズクラブのエッセーの会では、エッセーの書き方を学んだりフィードバックしあったり、テーマについてディスカッションしたりして、楽しくライティングをスキルアップしています。
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