シリア紛争の損失は31兆円、ワールド・ビジョンが試算
■シリアと子どもたちの将来のために、平和的解決を
世界の子どもを支援する国際NGOワールド・ビジョン(以下、WV)は、2011年から続くシリア紛争により、シリアや周辺諸国(レバノン、ヨルダン、トルコ)そして子どもたちが受けた経済的・機会的損失が、2,750億ドルに上ることを発表します。
これは、WVが欧州最大の経済コンサルティング会社であるフロンティア・エコノミクス社と共同で作成したレポート「COST OF CONFLICT FOR CHILDREN -Five Years of the Syria Crisis- (子どもが払う戦禍の代償 -シリア紛争5年)」の中で明らかにされた試算です。「この莫大なお金は戻ってきません。子どもたちの教育、保健医療、安全な環境の整備、生計向上等に1ドルも使われることなく、消えたのです。」WVの中東支援を統括するコニー・リンネンバーグは語ります。
また、同レポートでは、このまま紛争が2020年まで続けば、損失は1.3兆ドルに達するとも報告されています。WVシリアの危機対応責任者のウィン・フラッテンは、「これらの数字は、シリアや周辺諸国の苦悩を端的に表したに過ぎません。1ドル1ドルの金額の裏に、一つひとつの数字の背後に、一人の子どもがいることを忘れてはなりません。学校に行けない子ども、お腹をすかせて床に就くしかない子ども、病気なのに診てもらえない子ども、屋根のない家に住まなくてはならない子どもがいるのです」
■子どもたちの危機
・約230万人の子どもたち(約470万人のシリア難民の半数)が、難民としてシリア国外で暮らしています。
・シリア国内で人道支援を必要としている1,350万人のうち、約600万人が子どもです。
・シリア国内にいる210万人以上の子どもたちが学校に行けず、約200万人の子どもたちは(支援が届きにくい)僻地で暮らしており、20万人以上の子どもは包囲された地域に住んでいます。また国連は、1,600件以上もの深刻な子どもの権利侵害を記録しています。
・子どもたちは家族、友人、住む場所を失い、様々な暴力を見たり経験したりしています。
WVは2011年の紛争発生時からこれまでに、シリア国内および周辺諸国で、食料や保健衛生、教育、子どもの保護等の分野で活動し、200万人以上の難民や国内避難民に対して支援を届けました。しかし、紛争が続く限り支援のニーズは尽きることはありません。