2016-05-25

G7伊勢志摩サミット:国内有識者がタックスヘイブン対策を呼びかけ、オックスファム・ジャパン

オックスファム・ジャパンは5月25日、下記のプレスリリースを出しました。

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5月26日ならびに27日、G7伊勢志摩サミットが開催されます。これに先駆けて5月20日から21日に開催されたG7仙台財務大臣・中央銀行総裁会議では、タックスヘイブンにおける自動情報交換制度の導入などの対策を強化することで一致したと報じられています。G7伊勢志摩サミットでは、国際協調によりさらに実効性のある合意がなされることが望まれます。

岩井克人・東京大学名誉教授ら日本の著名経済学者をはじめとした有識者がタックスヘイブンへ向けた取り組みを呼びかけ

「パナマ文書」の公開などを契機に、世界中でタックスヘイブンへの取り組みを求める声が高まっています。5月12日にロンドンで開催された腐敗防止サミットへ向けて、ベストセラー『21世紀の資本』を執筆したトマ・ピケティ教授、2015年のノーベル経済学賞受賞者でもあるアンガス・ディートン・プリンストン大学教授ら、世界30カ国以上から300名以上の経済学者たちが公開書簡を発表しました。公開書簡は、格差の拡大を推し進めるタックスヘイブンに経済的な正当性はないとして対策を呼びかけています。

この公開書簡に賛同し、日本国内でも、岩井克人・東京大学名誉教授、西川潤・早稲田大学名誉教授、三木義一・青山学院大学学長、上村雄彦・横浜市立大学教授、諸富徹・京都大学教授ら、有識者47名が日本政府に対し、タックスヘイブンへの有効な対策へ向けてG7サミット議長国として積極的な役割を担うことを呼び掛けています。

「10人の経済学者が集まると、11の異なった経済政策が提案されると言われます。だが、富裕層や多国籍企業がペーパーカンパニーを使って資産を隠すことを許しているタックスヘイブンの存在に関しては、1つの提案しかありません。それがこの公開書簡の内容です。」 岩井克人 東京大学名誉教授

世界の格差を拡大するタックスヘイブン:世界で年間4300億ドル、途上国で1700億ドルの税収の逸失

世界の最も裕福な62人が世界の下位半分の36億人に匹敵する資産を保有しているといわれるように、世界的な冨の偏在は著しくなってきており、タックスヘイブンはこうした格差を広げる一因となっています。タックスヘイブンにより、世界全体で失われている年間法人税収は1000億~2400億ドル(11兆円~26.4兆円)、すなわち世界の法人税収の4~10%にも上り、また個人資産への税収の逸失は1900億ドル(21兆円)にも上っています。また、貧しい途上国では毎年1700億ドル(19兆円)もの税収の逸失を余儀なくされています。これだけの財源があれば、今G7サミットでも重要議題となる保健サービスの拡充を通し、1.5億人の子どもたちの命を救うことができます。

タックスヘイブンによって途上国も先進国も税収を失っています。そのツケを払わされるのは、各国の一般市民と中小企業であり、世界の最も貧しい人々です。格差拡大の要因であるタックスヘイブンの時代を今こそ終わらせるため、すべての国が参加する国際的な取り組みが必要です。

G7伊勢志摩サミットへ向けた提言

私たちは、G7伊勢・志摩サミットにおいて議長国の日本政府が積極的にイニシアティブをとり、BEPS最終報告書の積極的内容を活かした公正な国際課税制度の実現に向け、以下の3項目を首脳宣言と行動計画に盛り込むことを要請します。

1.多国籍企業情報の公開

今後整備される金融機関口座情報の自動交換制度や多国籍企業の国別報告制度を通じて収集した情報の一般公開を公約すること。また、こうした取り組みに対し、タックスヘイブンを含むあらゆる国・地域の例外ない参加を求めること。

2.内部告発に依拠しない実質的所有者の透明性の確保

「権限ある当局間の国際的な実質的所有者情報の交換」(4月G20財務相・中央銀行総裁会合)を早急に強化し、実質所有者の透明性を確保すること。

3.開発途上国を含む広範な国々が参加できる国際的枠組みの構築

新たな取り組みにおける制度の抜け穴を許さないためにも、途上国を含む広範な国々が実質的に参加できる国際的な枠組みを構築すること。

プレスリリース:http://oxfam.jp/news/cat/press/g7_47.html