G7伊勢志摩サミット閉幕、「租税回避への取り組みに前進なし」とオックスファム
G7伊勢志摩サミット閉幕:オックスファムによる評価、G7による租税回避への取り組みに実質的な前進はなし
2016年5月27日、G7伊勢志摩サミットは、タックスヘイブンへの取り組みに対し、実質的な前進を見ないままに閉幕しました。
G7各国首脳は、租税回避を行っている多国籍企業や一部富裕層の側に甘く、タックスヘイブンによって不利益を被っている一般市民や途上国の貧しい人々の側に立ったとはいえません。タックスヘイブンへの取り組みを強化するなどの事前の報道にもかかわらず、採択された首脳宣言に新たな合意や取り組みは盛り込まれておらず、その内容はこれまでさまざまな場で合意されてきたことを確認したに過ぎませんでした。
G7各国首脳は、すべての企業による国別報告制度や金融口座情報の自動交換制度について情報の一般公開を公約し、あらゆる国や地域の例外ない参加を求めることもできました。また、地域間、国家間の法人税の切り下げ競争を食い止めるために協力していくことを確認することもできました。
日本の政府税制調査会でも確認されているように、企業や富裕層の租税回避行為で最大の打撃を受けるのは開発途上国です。世界的な租税回避対策の枠組みを「G20、OECD、そして関心のある途上国」という枠に狭めるのではなく、すべての国・地域が参加できる枠組みの構築を呼びかけ、尽力するなどもできました。
タックスヘイブンによって途上国が失っている税収入は少なくとも年間1700億ドル(19兆円)と言われています。 *オックスファム報告書「タックスヘイブンの時代に終焉を(Ending the Era of Tax Havens )」
アフリカの金融資産の30%がタックスヘイブンに置かれていると推測され、このことによって毎年140億ドルの税収入が失われています。140億ドルの予算があれば、母子保健の充実などを通して年間400万人の子どもの命を救うことができるばかりか、アフリカのすべての子どもたちが学校に通うために必要な教員を雇用することができます。 *オックスファム報告書「もっとも豊かな1% のための経済(An Economy for the 1%)」
最後に、格差の拡大は、民主主義の危機に通じます。富の格差は、政治権力の格差につながり、さらなる経済格差を推し進めています。今回のパナマ文書問題で、大企業や富裕層という担税力のあるものが率先して租税回避を図っていることが明らかとなりました。租税制度は民主主義の根幹にあり、国・社会を成り立たせる資源です。タックスヘイブンは、格差の拡大を推し進め、民主主義を脅かしています。
首脳宣言が、タックスヘイブンへの取り組みに関して、OECDやG20などにおける既存の合意を支持したこと自体は歓迎すべきことです。しかし、タックスヘイブンの問題への有効な対策としては、全く不十分です。G7各国首脳は、民主主義の危機をもたらし、多国籍企業や一部富裕層を利するタックスヘイブンに対して危機感を持ち、厳しい態度で臨むべきです。