マラウイでアルビノ襲撃続く、2014年11月から少なくとも18人が殺害、アムネスティ報告書
マラウイでは、その身体の部位が儀式に利用されるアルビノの人びとの殺害が急増している。この犯罪に対して、警察は機能せず、アルビノの人びとはいつ殺害されるかもしれないという恐怖のなかでの生活を強いられている。6月7日、アムネスティ・インターナショナルは、調査報告書の中で明らかにした。
アルビノの人びとへの襲撃は、過去2年で急増し、2014年11月以降、少なくとも18人が殺害され、少なくとも5人が誘拐され行方不明のままである。この4月には、乳児を含む4人が殺害された。
マラウイやモザンビークでは、彼らの骨が富と幸運をもたらすお守りや魔法の薬などの素材として、伝統医学の施術者に売られている。また、その骨は金を含んでいるという迷信も、殺害に拍車をかけてきた。
農村部で行われる儀式は、大抵秘密裏に行われるため、犠牲者数は、実際にはずっと多いと思われる。また、アルビノの人びとに対する犯罪データの収集もお粗末だ。
さらに、犯罪だけでなく、暴言をあびせられたり、公共サービスを受けられなかったりするなど、さまざまな社会的差別を受けている。教育でも差別される。
アルビノは先天的にメラニンが欠乏する疾患アルビニズムを持つ人びとだが、紫外線から体を守るメラニンがないために皮膚へのダメージを受けやすい。しかし同国では日焼け止めなどの対処法や病状などを知るすべが整っていないため、皮膚がんの死亡率も高い。
機能しない警察
同国の警察庁によると、2014年11月以降、アルビノの人びとに対する犯罪が少なくとも69件あった。アムネスティの調査で、警察には、犯罪捜査に必要な訓練も技術も不足していることがわかった。
警察には、犯罪発生時に素早く対応する人員、襲撃事件が多発する地域で警戒体制を敷くために配備する要員などが不足している。
さらに、懸念されるのは、一般社会と同様にアルビノの人びとに対する偏見を持ち、その人権侵害にまともに対応しない警官がいることだ。
検事総長によると、警察はアルビノの人びとに対する犯罪に関わる法規のすべてを知っているわけではないということだった。
住民が、アルビノに対する犯罪の容疑者に、自分たちの手で罰を下す殺人事件があった。今年3月、モザンビークとの国境に近い町で、身体部位を密輸したとされる男7人が、住民らに焼き殺された。
当局は、この住民による私刑を厳しく非難する声明をだし、同様の犯罪を防止する対策を取らなければならない。さらに、実効性のある捜査を行い、容疑者を摘発して、裁判にかけなければならない。
おびえながらの生活
マラウイには、7,000から10,000人のアルビノの人びとがいる。このような警察の機能不全で犯罪の多発する中、彼らは、常に恐怖の中での生活を強いられている。
ある女性は襲撃されたことで生活が変わった、とアムネスティに語った。「子どものころは、何でもできると思っていた。だけど、今はとても慎重だ。以前は、なんの恐れもなく動き回っていたが、今は5時半を過ぎると、帰宅している。心が休まらない」
ある男性(37才)は言う。「他人から面と向かって『お前を売る』と言われる。6百万MK(1万米ドル)の値打ちがあると言われたこもある。自分に値段をつけられることが、腹立たしかった」
このような悪口、嫌がらせ、脅迫など、自分の村や地域で浴びせ続けられるのも、深刻な問題だった。アルビノの女性は「治癒」とも呼ばれ、彼女らと性交渉をするとHIVが治るという迷信もはびこっている。ある女性は次のように語った。「しっかりしないと、嫌がらせや侮辱に耐えきれず、アルビノの子どもを捨てることになってしまう」
アムネスティは政府に対し、アルビノの人びとの生存権と安全を保護する措置を講じ、農村地域では、警備する警官の数を十分に拡大し、もしもの事件発生時には、即応できるようにしておくことを求める。
また、届けがあった事件に対して、実効性ある再捜査を行い、容疑者を裁判にかけねばならない。
警察はすべての人を犯罪から保護する義務がある。アルビノの人びとに対する犯罪の公正な捜査と裁きがなければ、不処罰の風潮が助長され、犠牲者を出し続けることになる。
プレスリリース:http://www.amnesty.or.jp/news/2016/0612_6094.html